2012 Fiscal Year Annual Research Report
自閉性障害幼児の家庭訪問型発達支援モデルの構築と包括的評価
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22330262
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60202389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 貴秀 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (60276392)
皆川 泰代 慶應義塾大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (90521732)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 発達支援 / 自閉症 / コミュニケーション / 家庭訪問型支援 / セラピストトレーニング / ペアレントトレーニング / コンサルテーション |
Research Abstract |
本研究では、自閉症幼児について、運動、認知、コミュニケーション、言語の発達を促進するための早期発達支援プログラムを構築し、訓練を受けたセラピストが家庭訪問支援という形で実施した。どのような支援が最も効果的かを、行動・発達などの包括的な指標を用いて継続的に評価し、客観的に明らかにした。構築した発達支援プログラムは、自閉症児個人の障害や発達上のニーズに対応できる分岐型のものであり、継続的な支援によって家庭などの日常場面で効果を最大化できるようにした。 研究実績の特徴として、以下のものがあげられる。1.自閉症幼児の家庭への訪問し、発達支援を実施し、家庭内の日常環境の中での自然な発達を促進した。これによって、行動の機能化、般化、維持をはかった。2.発達支援の専門家としての家庭訪問支援セラピストを養成するためのプログラムを開発し、その効果を、セラピストの行動および自閉症児の行動という点から分析した。3.セラピストと家庭との連携をはかり、家庭の中での発達支援を促進するため、保護者の負担にならない形での、短期集中型のペアレントトレーニングプログラムを構築し、保護者支援を行った。その結果、保護者と自閉症児との社会的相互作用の改善を得ることができた。4.自閉症児のその時点での発達と行動レパートリーを正確に評価するための90項目の発達評価シートを作り上げた。定型発達幼児期の行動(特に、コミュニケーション行動)を、発達の全領域で網羅したものとなった。5.より広範囲の実践現場で使えるようなマニュアルを完成させ、病院、発達障害者支援センター、発達支援センター、児童発達支援施設、NPO法人、保育園、特別支援学校などで、実践現場スタッフへの短期間の集中介入研究を目的としたワークショップを行うことで、支援プログラム自体の実行可能性や、実際の場面での活用方法を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は以下の成果を上げている点で、順調に進んでいるといえる。まず、6つの発達モジュールからなる慶應早期発達支援プログラムを開発した。①視覚的・聴覚的注意、②共同注意、③模倣、④言語理解、⑤言語表出、⑥対人的コミュニケーション。それぞれのモジュールを構成する行動の評価項目を90項目に集約し、発達の遅れや偏りを評価する早期発達評価シートを完成させた。それらを用いて家庭訪問型支援を実施し、重度の自閉症児に対して、①視覚的・聴覚的注意、②共同注意、③模倣の向上が見られることを示した(Matsuzaki, & Yamamoto, 2012).)。 家庭訪問支援を様々な現場で活用してもらうために、セラピストトレーニングシステムを開発し、それを用いてセラピーを実施してもらった。開発したセラピストトレーニングは、実際のセラピーの現場をビデオで録画し、それを用いてスタッフで討議し、コンサルテーションを行うOJT(on-the-job training)を含んでいるところに特徴がある。セラピストトレーニングの結果、セラピストの発達支援スキルの向上、および自閉症児の行動獲得と発達促進が示された(松崎・山本,2011)。 家庭での発達支援を、母親に実施してもらうための短期集中指導プログラムを開発し、それが母親行動と自閉症児の発達促進に効果があることを明らかにした(松崎・齋藤・山本,2011)。 家庭訪問支援を継続する中で、模倣(粗大動作、微細動作、音声)が、後のコミュニケーション行動を促進する可能性が示されたので、「模倣」に焦点を当てたプログラムを開発、適用して、その効果を見出した(松崎・山本,2012)。 これらの成果を、様々な実践現場で活用してもらうために、インターネットを使ったコンサルテーションの効果の分析を行った(Koremura, Kondo, & Yamamoto, 2012)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)研究目的:支援方法の効果評価のため、「家庭訪問支援」、「センター通所型支援」、「遠隔地支援」が、自閉症児の発達に及ぼす効果の系統的分析を継続する。 (2)研究参加者:自閉症児、保護者、発達支援セラピストに研究に参加してもらう。 (3)支援対象となる行動と行動アセスメント:以下の行動を支援の対象とし、その成立と日常場面の中での機能化を評価する。①社会的相互作用(「対人相互作用時系列評価法」)、②知覚運動協応(「発達検査」、「随意運動検査」)、③共同注意(「初期社会機能発達尺度(ESCS)」)、④模倣(「模倣評価尺度」)、⑤音声理解(「音声言語理解検査」)⑥初期音声表出(「音声言語検査」)、⑦自閉性障害評価(PARS,CARS)、⑧全体的発達(K式発達検査、田中ビネー検査)、⑨セラピストの「運用適切度」、⑩保護者の「運用適切度」、「ストレス尺度」。 (4)支援条件:①「家庭訪問型支援」:セラピストが家庭に訪問し、保護者とともに支援を行う。保護者の行動を観察し、適切な関わりをどう広げるかについてのフィードバックを行う。同時に、1週間の保護者による支援の実施と行動の変化について、データシートを見ながらフィードバックを行う。②「センター通所型支援」:自閉症児と保護者に、定期的に大学に来訪してもらい、専門性の高いセラピストが発達支援を実施する。③「遠隔地支援」:早期発達支援方法の指導を受けたセラピストが、それぞれの実践現場(病院、児童発達支援施設、発達支援センター、発達障害者支援センター、NPO法人)で子どもへの発達支援、保護者面接を行い、その結果を通信情報ネットワーク経由で大学に送信し、スーパーバイズを受ける。これらの介入研究によって得られたデータについて、数量的な解析を行い、効果的な介入条件を明らかにする。 (5)発達・学習支援を学齢期に移行させていくプログラムを作成する。
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Research Products
(7 results)