2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 彰夫 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30251359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院・情報システム学研究科, 教授 (80192235)
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Keywords | 非可換確率論 / 情報幾何学 / Finsler計量 |
Research Abstract |
情報幾何学は,確率分布空間が有する自然な微分幾何構造の研究にその起源を持つ,Riemann計量に関して互いに双対な2つのアファイン接続を有する多様体を研究する分野のことである.本研究の目的は,情報幾何学および量子情報理論の諸分野における断片的研究成果を統合・発展させ,「非可換確率論における情報幾何学的方法」とでも呼ぶべき一般的方法論の体系化をめざすと共に,量子情報科学における新しい問題を発掘し,それらに応用していくことにある. 上述のように,情報幾何学は通常,Riemann幾何学の一般化と見なされるが,我々は本年度,Finsler幾何学的視点を援用することによってはじめてその本質が捉えられる非可換統計学的問題が存在することを明らかにした.一般化amplitude-damping量子通信路の推定問題を考える.熱浴の温度一定という条件下でdampingパラメタηを推定する問題では,最適入力が一般にηに依存することが研究代表者の先行研究で示されているが,本研究では,熱浴の温度に対応するパラメタpも同時に推定する問題を扱った.その結果,出力状態族の量子Fisher計量を最大化する入力は,接空間上のどの方向に着目するかに依存することが明らかになった.言い換えれば,一般化amplitude-damping量子通信路多様体の接空間はRiemann計量を許容せず,Finsler計量構造を有することになる.本研究では,そのFinsler計量を接バンドル上の関数として陽に与えることにも成功し,p=1/2が特異点となること,非特異点においても計量はC^<1,1>級ではあるがC^2級ではないこと,などを明らかにした.Finsler情報幾何学は研究の端緒についたばかりであり,ひな形になる先行研究も全くないので,例えばどのような接続構造が統計学的に自然な解釈を許容するのかなど,基礎的な未解決問題が山積する興味深い研究方向である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Finsler情報幾何学という全く新しい研究対象を見いだし,興味深い結果も得られつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で発掘されたFinsler情報幾何学という新しい研究対象の研究を進展させると共に,量子情報科学における新しい問題をさらに発掘していく.
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