2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340029
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
谷島 賢二 学習院大学, 理学部, 教授 (80011758)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | シュレーディンガ方程式 / 関数方程式 / 初期値問題 / 散乱理論 |
Research Abstract |
量子力学における基本方程式であるシュレーディンガー方程式の初期値問題に対して解作用素が存在して一意的かの問題を研究して, 特に無限遠方で激しく増大する磁場中の量子の運動を記述するシュレーディンガー方程式に対して既存の結果を著しく改良した次の結果を得ることができた:磁場並びに電場が時間に依存する場合も, 磁場の無限遠方における挙動と電場のポテンシャルの不連続性並びに空間無限大における挙動が, 時間を固定したハミルトニアンがコンパクトな台をもつ無限階微分可能な関数の空間上本質的に自己共役であるためのこれまで知られた最も一般的な定理の条件を満たせば, ポテンシャルの時間に関する導関数に対する適当な条件の下で解作用素は一意的に存在する。電場のポテンシャルがさらに強い不連続性をもつ典型的な例である一点相互作用において, 相互作用の中心が移動するシュレーディンガー方程式の解の存在と一意性の問題を4月に招聘したナポリ大学のFigariとともに試みたがこれについては未解決に終わってしまった. ミュンヘン大学のSiedentop教授を招聘して同教授が長年研究してきた半相対論的な量子多粒子系のハミルトニアンの評価を試みたが技術的困難に直面して本質的な発展は得られなかった。この課題については繰り越した補助金によって招聘したBraunschweig大学のBach教授とも試みたがここでも十分な成果は得られなかった. シュレーディンガー作用素の散乱理論における波動作用素のルベーグ空間あるいはソボレフ空間における有界性について、とくに作用素が連続スペクトルの下端において特異性を持つ場合既存の結果の改良を試みたが、この段階ではまだ十分に一般な結果を得るに至っていない.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュレーディンガー方程式の初期値問題の解作用素の存在と一意性についての結果は当初目標としたものよりは、自己共役性と磁場と電場の関係について、若干弱いものであったが、それでもこれまでの結果に比べて十分一般な結果が得られた。相互作用の中心が動く一点相互作用をもつシュレーディンガー方程式の解作用素の存在と一意性について報告者は既知と主張している論文の正確さに疑念を持っており、既存の方法と異なった手法により問題の解決が必要であると考えている。Figari教授はこれに関する一連の論文の共著者の一人であり、Figari教授を招聘したのは第一にこの疑念を晴らすためであり、可能ならば共同で新たな手法を開発するためであった。これについては十分な結果を得るには至っていないが少なくも既存の論文の手法が理解困難で明快でないことは明らになり克服すべき問題が何かは明らかになった. Siedentop教授あるいはBach教授との共同研究も結局は中途で終わってしまったが、報告者の研究の興味を半相対論的な多粒子系の量子力学の数理、とくにgrapheneの数理に現れる半相対論的な量子物理学の数理の研究の方向に向かわせることになった点で有意義であった. 波動作用素のルベーグ空間における有界性の問題についても完成にはほど遠いが若干の発展があった.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の若干の発展を引き継いでシュレーディンガー作用素の散乱理論における波動作用素のルベーグ空間・ソボレフ空間における連続性の問題を、とくにシュレーディンガー作用素が連続スペクトルの下端に特異性をもつ場合に解決することを目指す。すでに空間次元が奇数の場合には現在得ている考え方で目標とする結論が得られると考えているので、空間次元が偶数である場合に重点を置いて研究を推進する予定である。このとき、特に次元の低い2次元ならびに4次元の場合に困難が予想されるが地道な研究で乗り越えるより方法がないと考えている。 Grapheneの数理に関しては、いくつかの研究論文により情報を収集すると同時に, 26年度8月にこの方面の研究者の一人であるデンマーク Aalborg大学のCornean教授を訪問して共同研究を試みる予定である。場合によっては同教授を翌年度研究費補助金によって招聘することも考えてみたい。いずれにせよ6角格子における差分シュレーディンガー作用素ならびに磁場を持つパウリ作用素のスペクトル・散乱理論や差分シュレーディンガー方程式の解の性質についての研究から始める方針である。
|