2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宍倉 光広 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 哲夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10127053)
稲生 啓行 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (00362434)
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Keywords | 力学系 / カオス / 分岐 / 複素力学系 / くりこみ / フラクタル / 放物型不動点 / 剛性 |
Research Abstract |
複素力学系の無理的中立不動点について、その局所ダイナミックス等について研究した。 昨年度の研究で導入された力学系的座標の概念を発展させ、それを用いて無理的中立不動点の周りの局所・半局所不変集合について研究した。局所不変集合はくりこみの変数変換の合成という形で与えられるが、そこに現れる変数変換の要素(指数関数とMoebius変換、そして、ファトゥー座標)についての評価を総合して、局所不変集合に現れる単純曲線の長さ等について解析し、それらがどのように組み合わされるかを記述する位相的モデル(Straight brush model)を提案した。 また、実の2次多項式族に関し、カオス的パラメータの測度が正であることを保証するJakobsonの定理があるが、これを定量的に下から評価する新しい方法を開発した。この評価については既にLuzzatto-高橋による評価があるが、それは10の-5000乗という、非常に精度の悪いものであった。これを全く別の複素力学系としてのYoccozのpuzzle分割を用いて評価し、局地的長さやモデュラー関数による評価のみを使って実関数としての微分等を一切用いない方法を与えた。現在、この方法による評価としては、10の-6乗程度の値を得ており、Luzzatto-高橋の結果に比べると大幅な改善になった。 2次元複素力学系の放物型不動点の分岐に関しては、宍倉・上田はE.Bedfordと共同研究を行い、前年度に確立された、放物型不動点の摂動のファトゥー座標の応用について研究した。特に放物型分岐後のジュリア集合の不連続な変化について新たに増加するジュリア集合の部分について、Ecalle円筒乗のHorn mapと平行移動の合成によって定義される力学系の不変集合によって特徴付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近放物型くりこみについては、力学系的座標の概念を整備することができ、これから多くの応用が期待される。また、Yoccozのpuzzle分割を用いた研究も基礎理論を確立した。これらの成果については多くの研究集会で発表し、好評を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
近放物型くりこみについてはこれまで得あられた成果を論文にまとめ、発表する。Yoccozのpuzzle分割の理論についても、Yoccozのみ発表の理論について整理し、今後の応用が可能なようにする。高次元複素力学系の放物型不動点については、上田、Bedfordと共同研究を行い、その分岐に関する更なる応用を探っていく。
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