2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宍倉 光広 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70192606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲生 啓行 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (00362434)
上田 哲生 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10127053)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 力学系 / カオス / フラクタル / くりこみ / ジュリア集合 |
Research Abstract |
無理的中立不動点を持つ複素力学系の局所不変集合を近放物型くりこみを用いて研究した。稲生・宍倉による近放物型くりこみに関する不変空間を利用すると、回転数が高いタイプの無理的中立不動点の周りのダイナミックスを理解することができる。このために、Dynamical chartの概念を導入し、近放物型くりこみの各ステップがdynamical chartの細分に対応することを見た。また、D. Cheraghiと共に、無理的中立不動点の代わりに、無限回衛星型くりこみ可能な多項式についても研究し、高いタイプの衛星型くりこみの双曲性を示した。これによりMandelbrot集合のある種の無限回衛星型くりこみ可能なパラメータでの局所連結性を示した。 また、実1次元2次多項式のカオス的パラメータの測度を、Yoccozパズル・パラパズルの組み合わせ的解析と円環領域のモデュラスの評価を組み合わせることにより評価した。この評価には函数論的な極値的長さの方法と調和関数のディリクレ積分の評価のための厳密な数値計算(区間演算)を用いた。 また、上田は高次元複素力学系の問題を多変数関数論の立場から研究し、特に2次元正則写像の半放物型不動点の構造とその分岐による吸引領域と不安定多様体の連続性について考察した. 稲生は、Mandelbrot集合の反正則2次多項式族における類似であるtricornと呼ばれる集合に対して,奇数周期の双曲成分に集積する外射線が自明な場合を除いて1点には収束しないことを示した (Sabyasachi Mukherjee氏と共同).複素2次元における歪積の力学系ではファイバージュリア集合の不連続性がsaddle connectionから生じる.この幾何的極限を,1次元のparabolic implosion理論の考え方を流用して,サドルのファイバー方向の線形化座標を用いて記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
くりこみ理論の応用について、Dynamical chartの概念の定義や衛星型くりこみに対する評価など大きな進展があった。これに関しては、研究分担者や国内外の研究者と協力しながら研究を進めることができた。実1次元2次多項式のカオス的パラメータの測度の評価についても先行結果(10の-5000乗)に比較して10の-7乗程度と格段に改良することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、カオス的な力学系の分岐現象について、複素解析的手法を通してくりこみ写像の性質を調べることにより、研究を続けていく予定である。特に近放物型くりこみについてはより広い回転数に対する評価と、応用のための様々な評価が必要である。 また、実1次元2次多項式のカオス的パラメータの測度の評価については、これまではチェビシェフ多項式の周辺でのみ評価していたが、より広いタイプに対する定式化を行い、測度評価を改善したい。
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