2012 Fiscal Year Annual Research Report
タイヒミュラー空間論に関連した力学系と確率過程のエルゴード理論的研究
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22340034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
盛田 健彦 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角 大輝 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313324)
宮地 秀樹 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40385480)
杉田 洋 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50192125)
大鹿 健一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70183225)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タイヒミュラー空間論 / エルゴード理論 / ブラウン運動 / 測地流 / 確率解析 |
Research Abstract |
平成23年度に懸案として残ったタイヒミュラー計量に付随したブラウン運動(T-ブラウン運動)の確率解析的接近法における拡散係数の滑らかさに関する難点については、ディリクレ形式による方法の導入によって解消することができた。一方、平成22年度の研究で得られていたT-ブラウン運動の内在的距離とタイヒミュラー距離の一致に関する結果の証明に新たに不備があることが判明したが、両者が同等の位相を定めるということは検証できており、この結果が弱まったとしても本年度の研究にとっては大きな影響はなかった。むしろ内在的距離に関する理解が深まったことはメリットの方が大きかったと考えている。 T-ブラウン運動の時間無限大での挙動を解析することによって、タイヒミュラー空間のサーストン境界の確率論的、ポテンシャル論的特徴付けを試みる作業については,種数 1 の場合の類似を示す辞書の概形がみえてきた。とくに、T-ブラウン運動によるタイヒミュラー空間のマルチンコンパクト化によって得られた境界とサーストンのコンパクト化による境界との関係、および、その境界における T-ブラウン運動の調和測度とタイヒミュラー測地流の不変測度との関係を、写像類群の作用のエルゴード理論的挙動を通して明らかにするための道筋を明確にした。 本研究の確率論に関する技術的な副産物として、準コンパクトな転送作用をもつ非特異変換に対するポアソンの少数法則の関数解析的接近法を開発し、2012年12月4日から12月7日に日本女子大学で開催された国際研究集会「Ergodic Theory and Metric Number Theory」における招待講演「Poisson limit law for a class of dynamical systems with quasi-compact transfer operators」の中で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度から懸案となっていたタイヒミュラー計量に対応するブラウン運動(T-ブラウン運動)の確率解析的接近法における拡散係数に関する難点が解決した。 平成22年度に得ていた結果の一部に不備が見つかったが、むしろ T-ブラウン運動の内在的距離に関する理解が深まるというメリットもあり、その後の研究遂行には影響しない軽微なものであった。 T-ブラウン運動によるタイヒミュラー空間のマルチンコンパクト化によって得られる境界とサーストンのコンパクト化による境界との関係を、写像類群の作用のエルゴード理論的挙動を通して明らかにするための道筋が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、T-ブラウン運動のグリーン関数を用いてタイヒミュラー空間のマルチンコンパクト化を可能な限り系統的な手法で構成する。その後、タイヒミュラー測地流の境界挙動に注意しながらマルチンコンパクト化で得られた境界とサーストンコンパクト化による境界との関係を、マルチン境界への写像類群の作用のエルゴード理論的挙動を通して明らかにする。これによって、タイヒミュラー空間のサーストン境界の確率論的、ポテンシャル論的特徴付けを試みる作業を終える。 平成24年度に明らかとなったT-ブラウン運動の内在的距離に関する結果の証明の難点については、これらの研究遂行上大きな影響はないが、もし、その成立を仮定すると幾つかの行程を省略あるいは短縮することができる。したがって、その改良も余裕があれば取り組みたい。
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Research Products
(4 results)