2011 Fiscal Year Annual Research Report
超高エネルギー宇宙線と地球大気相互作用の量子色力学に基づく定量的解析
Project/Area Number |
22340064
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
板倉 数記 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30415046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 寧 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (70453008)
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Keywords | 原子核(理論) / 高エネルギーハドロン物理 / 宇宙線 |
Research Abstract |
2年目にあたる平成23年度は、前年度の枠組みの整備を行い、理解を深めた。すなわち、本研究課題である「超高エネルギー宇宙線と地球大気相互作用の量子色力学に基づく定量的解析」に必要な、高エネルギーQCDについての摂動的な記述を、最新の枠組みであるカラーグラス凝縮を用いて行い、それをRHIC(衝突エネルギー200GeVなど)やLHC(衝突エネルギー7TeVなど)における「陽子・陽子」及び「陽子・原子核」衝突の生成粒子分布などの実験結果と比較検討を行った。 より詳しく述べると、カラーグラス凝縮の物理を記述する枠組みとしては、高エネルギーでの多重グルオン生成とその飽和を記述するrcBK方程式と呼ばれるものを用いた。この方程式は、1階微分を含む積分方程式であるが、自分たちでそれを数値的に解き、データベース化した。次に、そのデータを用いて前方方向(ビーム方向)に生成される粒子の断面積を与えるDHJ公式(Dumitru, Hayashigaki, Jalilian-Marian)と呼ばれる式に適用した。幾つかあるパラメータは、RHICエネルギーでの陽子・陽子衝突で決定し、それを用いて陽子・原子核衝突の前方方向での断面積を計算したところ、実験結果に非常によく一致した。この時、原子核に対する模型を用いているが、調節可能なパラメータは含まないため、新たなパラメータなしで実験結果を記述することに成功したことになる。この成果は、重イオン衝突の物理に関する最大の国際会議 Quark Matter 2011 や、高エネルギー散乱の物理を広範に議論する国際会議 ISMD 2011 にて発表した。 なお、年度途中で科研費雇用研究員が他機関へ転出し、研究の進捗が予定どおり進まなくなったため、24年度に一部繰越を行った。その際、GPUを購入し、計算機環境の充実を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中心的に数値計算に従事する予定だった科研費雇用研究員が、8月から海外の研究所へ転出することになり、その影響が無視できなかった。そのため、繰越申請を行って予定を24年度へ遅らせる必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方針、目標は明確で、変更する必要はない。しかし、具体的な進め方は人の能力に依存するので、次年度に新しい研究員を募集し、その人材と相談したうえで今後の方向性を見極めていく。
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Research Products
(7 results)