2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高エネルギー宇宙線と地球大気相互作用の量子色力学に基づく定量的解析
Project/Area Number |
22340064
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
板倉 数記 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30415046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 寧 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (70453008)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 原子核(理論) / 高エネルギーハドロン物理 / 宇宙線 |
Research Abstract |
3年目にあたる平成24年度は、新しく科研費雇用研究員として中国からWeitian Deng氏を迎え、新体制で進めることになった。Deng氏は高エネルギー重イオン衝突反応のモンテカルロシミュレーションコード「HIJING」の作成者の一人であり、Deng氏が本科研費に参加することになったために、宇宙線空気シャワーのシミュレーションにHIJINGを積極的に取り入れていく方針になった。 具体的には、HIJINGは原子核・原子核衝突や陽子・原子核衝突のRHICエネルギーまでの生成粒子分布などを全体的によく記述する枠組みであるが、宇宙線空気シャワーで重要になる「超前方方向」から「前方方向」(すなわち、ビーム軸に近い領域)の現象は不得手であった。特に、HIJINGには前方方向で重要な物理である高密度グルーオン飽和、すなわち「カラーグラス凝縮」の物理が含まれていなかった(これはHIJINGが作られた時点でカラーグラス凝縮の物理は発展していなかったため)。そこで、前年度までに行ったカラーグラス凝縮の描像に基づく前方方向での精密な記述と、従来のHIJINGを組み合わせたコードを作成した。なお、前方方向だけでなく、衝突イベントの全体的な振る舞いを記述するために、カラーグラス凝縮の寄与としては、前方方向で効く寄与だけでなく、前方方向以外の場所でも効く「kt 因子化」に基づく寄与も考慮している。このようなHIJINGに対するカラーグラス凝縮の寄与の導入は、HIJINGコードの改善となっている。実際、この改善されたHIJINGは、陽子・陽子衝突の全断面積や非弾性散乱断面積のエネルギー依存性を非常に正確に記述することがわかった。この結果は、名古屋大学で開かれた超前方方向での物理に関する国際会議で発表し、多くの専門家たちの興味をひいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費研究員の交代という余儀ない事態を受け、体制を立て直す必要があった。しかし、新しい研究員を迎えて、強力に目標に向けて進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の段階で、陽子・陽子衝突のかなり正確な記述を得ることに成功した。25年度にはその成功を受け、陽子・原子核衝突に取り掛かり、その後、空気シャワーシミュレーションのコードに組み込む。
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