2012 Fiscal Year Annual Research Report
MPI、pythonとFermi GPUを使用したトリガーシステムの構築
Project/Area Number |
22340066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 伸彦 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50290854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 領介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90193531)
樋口 岳雄 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (40353370)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / データ収集系 / ハイレベルトリガー |
Research Abstract |
本研究は、国内最大規模の加速器実験であるBelle II実験を前提に、そのピクセル型検出器(PXD: ビームパイプに最近接)のデータをシリコン崩壊点(SVD: PXDのすぐ外側)の情報を使って削減することを目標としている。電子-陽電子の衝突事象ごとのPXDの出力データサイズは、一切加工をしなければ800kBであり、事象レートの最大値を30kHzと設定しているBelle II実験で記録できるデータ帯域を大幅に超える。そこで4層からなるSVDの各層に残された荷電粒子の通過位置情報(4点分)をから荷電粒子の飛跡を高速に再構成し、これをPXD側に内挿して、飛跡とPXDの交点周辺のデータ(region of interest: ROI)のみを記録する方針をとる。 本年度は、(研究協力者の協力の下)まずシステムを実装するための各機器の接続方法について検討した。PXDの全出力は特殊な読み出しエレクトロニクス(FPGAを搭載したATCAモジュール)で読み出されそこで一時的に保管される。SVDの出力は読み出しエレクトロニクスを経由して最終的に複数のPCから構成される「ハイレベルトリガー(HLT)」に入力され、そこでSVDの全情報を用いて荷電粒子の飛跡が再構成される。飛跡情報はEthernet経由でATCAモジュールに通知され、FPGAでROIの情報のみが切りだされ後段に出力される。上記、接続設計のほかに、ATCAモジュールの開発、同モジュール内のFPGAファームウェアの開発、HLTの性能測定(PC数に対するデータ転送速度の線形性)、HLT上で荷電粒子の飛跡を再構成するソフトウェアの開発着手、ROIパケットの雛型設計など、極めて多くの進捗があった。 さらに、平成25年度にドイツの研究所(DESY)でビームテストを行うことを目標に、検出器を把持するシステムの設計検討なども行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究成果は極めて多いが、DESYでのビームテストに向けて解決すべき課題はなお多数あり、たとえばATCAモジュールの安定動作性、同モジュールのEthernet接続の確立、SVDを読み出すエレクトロニクスの開発と安定動作性、SVDから読み出したデータをHLTのラインに乗せるまでのソフトウェア的経路の確立、HLTからATCAモジュールにROIを転送する機構の確立、PXDを制御するソフトウェアの開発、検出器を把持する装置の完成などがあげられる。本年度の成果自体は十分といえるが、全体の課題数に対して達成された課題数の比率から上記のとおり自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の中で述べた通り、本研究にはなお複数の乗り越えるべき課題が残されている。とくにSVDの情報から荷電粒子の飛跡を再構成するソフトウェア(HLT上で動作)の開発がやや遅れていること、DESYでビームテストをする場合に求められるオンライン・データクォリティー・モニター(検出器データの情報の一部を抜き取り、オンラインでグラフ化することで検出器の異常を人間の目で判断するシステム)の開発が残されていること、SVDデータのフォーマットが未確定であるため飛跡を再構成するソフトウェアの開発がやや困難となっていること、などが挙げられる。平成25年度はこれらの課題を解決した上で、DESYでのビームテストを実施し、PXDのデータサイズ圧縮が現実的に可能かどうかを評価する。 これと並行してGPUを一台のサーバに搭載して複数同時に可動させる研究を行う。GPU複数台が一台のサーバに搭載出来、高速でデータ処理を行う事が出来ればコスト・パーフォーマンスが高いデータ収集システムを構築する事が出来る。
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