2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340069
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 幸士 独立行政法人理化学研究所, 橋本数理物理学研究室, 准主任研究員 (80345074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博 独立行政法人理化学研究所, 川合理論物理学研究室, 専任研究員 (90250977)
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Keywords | 超弦理論 / ホログラフィック原理 / 原子核 / 量子色力学 / クォーク / 格子場の理論 / 超対称性 / 非摂動論 |
Research Abstract |
橋本は、超弦理論のテクニックを量子色力学に応用して原子核物理学を解明する最初のステップを達成した。原子核物理は核子(中性子・陽子)の多体系の量子力学として定義されるが、核子はクォークの複合状態であり、クォークの量子色力学を解く必要がある。超弦理論のホログラフィック原理を量子色力学に適用し、核子が多数ある状況を構築することで、量子色力学から直接、隠した体系の量子力学の作用を導出することに成功した。この作用を用い、2体系の近距離斥力、3体系の有効斥力を計算し、実験と定性的に一致することを見た。この結果は、ホログラフィック原理の計算手法が確かに正しいものであることを示している。さらに、核子の統計力学的な性質、すなわち、色の数が奇数ならばフェルミオンとして振る舞うこと、がホログラフィック原理から導かれた。 鈴木の研究成果は、主に、低次元のWess-Zumino模型の非摂動論的な格子定式化に関するものである。具体的には(1)超対称性などの対称性を完全に保つ非摂動論的定式化を提案した。これは、いわゆるSLAC微分に基づく格子定式化である。従来そうした定式化では局所性に問題があるとされてきたが、我々は、低次元のWess-Zumino模型では超対称性のために理論が有限になり、そのため局所性の問題が起こらない事を指摘した。(2)いわゆるNicolai写像に基づく格子定式化は有限の格子間隔では超対称性など連続理論の対称性を壊している。我々は、一般のsuperpotentialに対して、全ての対称性が連続極限で回復する事の簡潔な証明を与えた。これらの成果は、例えば、2次元のWess-Zumino模型をN=2超対称性共型場理論のLandau-Ginzburg模型として使う際の非摂動論的解析の基礎を与えるものである。
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