2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340069
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 幸士 独立行政法人理化学研究所, 橋本数理物理学研究室, 准主任研究員 (80345074)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博 独立行政法人理化学研究所, 初田量子ハドロン物理学研究室, 専任研究員 (90250977)
|
Keywords | 超弦理論 / ホログラフィック原理 / 原子核 / 量子色力学 / クォーク / 超対称性 / 非摂動効果 |
Research Abstract |
研究代表者の橋本は、超弦理論のホログラフィー原理に基づいた新しい原子核の描像を構築するため、特に重い原子核について、昨年度の研究で明らかになった核子多体系の行列有効模型に基づいた解析を行った。解析の結果、原子核は核子のバウンドした状態であることが示され、特に、その半径が核子数の1/3乗に比例することが示された。これは、原子核の基本的な性質であり、それらがQCDから再現されたことは特筆に値する。この研究成果を仕上げるためには、本研究課題の研究費で雇用したポストドクター研究員との様々な研究と議論が重要な部分を占めた。さらに、関連する研究成果として、重イオン衝突において核物質が素早く熱化する現象を、超弦理論のホログラフィーを用いて検証し、実験結果と矛盾しない解析結果を出した。また、重イオン衝突における強い電場とカイラルアノマリーの効果が、クォークグルーオンプラズマ中のある種のソリトン解の効果として理解できることを示した包これらは、重イオン衝突をQCDの第一原理的な計算で解析できることを意味しており、特に、超弦理論とソリトンなどの数理物理的手法が有効であることを示している. また、当該年度の鈴木の研究成果は以下の通りである。まず、超弦理論のコンパクト化を表す超共型場の理論に対するいわゆるLandau-Ginzburg記述を数値的に調べる非摂動論的方法を定式化し、それを用いた数値計算を行った。次に、4次元超対称Yang-Mills理論の格子定式化において、超対称性Ward-高橋恒等式が連続極限で回復することを摂動の全次数で証明し、この定式化の基礎付けを行った。最後に、多核子系を格子QCDでシミュレートする際に問題となるクォークプロパゲーターの縮役を簡単化する方法を考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子核の最も基本的な性質である、原子核の生成やその半径についての情報は、本研究課題の第一の成果として得られているが、一方で、原子核のその他の重要な性質、例えば陽子中性子の数の違いなどと安定性との関係などが未だ研究中途であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に陽子と中性子の違い、すなわちアイソスピン依存性などを具体的に取り込む手法を開発し、それが原子核の安定性にどのように効いてくるかを、超弦理論から導出された核子行列模型から研究する。また、重イオン衝突における超弦理論のホログラフィー原理の応用を更に進めるため、核子数密度のむらを導入したり、また速度依存性を入れる研究を行う。 現在の研究では、核子が遠距離にあるときの有効核力を取り入れられているかが自明でないので、メソンの交換による核力がどのように行列模型に反映されているかを検証することで、生成された原子核の行列描像と通常の核力描像の関係の明確化を図る。
|