2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岸田 英夫 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40311633)
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Keywords | 非線形光学 / 緩和過程 / 開殻π電子系 |
Research Abstract |
本研究は、開殻π電子系を有する有機材料の三次非線形光学応答と光励起後の緩和過程を実験的に明らかにすることを目的としている。本年度は主にドーピングしたπ共役高分子について、非線形感受率測定、緩和ダイナミクス測定を行い、非線形性の起源と緩和の詳細な物理機構を明らかにするための実験を行った。 ドープした共役高分子を対象に、ポンププローブ分光法を用いてポーラロン状態に起因した光学非線形性と光励起状態の緩和過程に関する研究を行った。物質系としては、主にポリチオフェンにCl04イオンをドープした薄膜、およびPEDOT/PSS薄膜を対象とした。化学的にドーピングされ、ポーラロンが生成されているポリチオフェンに対し、種々の光子エネルギーのフェムト秒レーザーで光励起し、赤外から可視領域におけるフェムト秒領域の過渡吸収スペクトルの測定を行った。光励起により近赤外領域に新たな吸収帯が生成されることが明らかになった。そのスペクトル形状、励起波長依存性、緩和の過渡特性から新たな吸収帯の帰属について検討を行った。その結果、ポーラロンを光励起することにより新たな励起状態が形成されることが示唆された。さらにポシププローブ測定で得られた過渡吸収スペクトルと、Z-scan法で得られた非線形感受率スペクトルの関係について詳細に考察を行った。 本年度、見出した新しい励起状態について、次年度以降、ドーピング濃度依存性の測定により、さらに詳細を明らかにする。
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