2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機電界効果デバイス界面の電子・スピン機能とその制御
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22340080
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 新一 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20291403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10260374)
田中 久暁 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50362273)
丸本 一弘 筑波大学, 大学院・数理物質科学科, 准教授 (50293668)
下位 幸弘 産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (70357226)
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Keywords | 有機半導体 / 電子スピン共鳴 / 有機電解効果トランジスタ / 非線形素励起 / 導電性高分子 / 理論計算 |
Research Abstract |
本年度は、電場誘起電子スピン共鳴(FI-ESR)法を以下の有機トランジスタ(FET)に適用した。 1.広島大の瀧宮教授と共同し、チエノチオフェン骨格を有する高移動度低分子材料C8-BTBTのFETを作製した。C 8-BTBTのπ電子のFI-ESR信号は極低温(4K)でも顕著に尖鋭化を示し、グレイン内でのキャリヤの高い運動性が明らかになった。一方、FI-ESR信号の角度依存性から、界面における高い結晶性が示され、キャリヤの高い運動性と符合した。さらに、観測されたスペクトル形状は、孤立分子のDFT計算から求められたg-テンソルから定性的に説明された。 2.名古屋大の永野らと共同し、導電性高分子(MEH-PPV)の主鎖配向超薄膜FETを作製し、移動度の異方性を評価した。主鎖方向とそれに垂直方向の移動度の異方性は約7-5であり、擬一次元的な伝導性が観測された。一方、前年度に対象としたポリヘキシルチオフェン(P3HT)の配向膜の異方性は約2.5であり、伝導は擬二次元的であった。この違いは界面分子配向の違いに起因しており、P3HTはedge-on配向のため鎖間伝導性が大きいのに対し、MEH-PPVはflat-on的な配向のため鎖間伝導が抑制されるためだと理解される。 3.阪大の竹谷教授、東大の岩佐教授らと共同し、ルブレン単結晶のFETを貼り付け法により作製した。FI-ESR信号はキャリヤの高い運動性を反映した顕著な尖鋭化を示したが、線幅のキャリヤ濃度依存性は観測されなかった。この結果は、伝導に対するトラップの影響が小さいことを意味しており、高移動度と符合する。さらに、デバイス動作状態でのキャリヤ濃度の変化を観測し、グラジュアルチャネル近似による予測とよく一致する結果を得た。 その他、P3HT/フラーレン複合体の光伝導観測や、有機低分子(NPB)へのヨウ素ドープによるキャリヤ生成に成功するとともに、イオン液体を絶縁層に用いたP3HTトランジスタの開発をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、概ね当初計画のとおりに進展しており、9件の雑誌論文、5件の国際会議発表、1件の受賞など、着実に成果が得られている。特に、実験グループと理論グループの緊密な連携は特筆すべきであり、キャリヤの波動関数やg値のDFT計算がESR信号の解析に組み入れられたことが、インパクトのある成果につながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は現在のところ順調に進展しており、研究成果の蓄積や、グループ間の連携体制の構築が進んでいる。最終年度に当たる次年度は、これまでに開発・進展させてきた電場誘起ESR技術をより多様な系へ適用するとともに、高濃度キャリヤ蓄積による新規現象の探索を行う。導電性高分子としては、F8T2やPCDTBTなどの新規材料を導入し、キャリヤのミクロな電子状態を系統的に明らかにする。また、C8-BTBTなどの低分子系においても、キャリヤダイナミクスを低温まで解明する。さらに、イオン液体絶縁膜を用いて高濃度キャリヤ蓄積を実現し、スピン転移や金属相の形成などを探索する。これらにより、有機半導体におけるキャリヤ特性の総合的な理解を目指す。
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