2011 Fiscal Year Annual Research Report
βパイロクロア酸化物におけるラットリング現象の解明と新物質探索
Project/Area Number |
22340092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣井 善二 東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 佳比古 東京大学, 物性研究所, 助教 (90435636)
山浦 淳一 東京大学, 物性研究所, 助教 (80292762)
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Keywords | 物性実験 / 超伝導 / ラットリング / パイロクロア酸化物 |
Research Abstract |
βパイロクロア酸化物におけるラットリング現象の解明に向けて研究を継続している。その成果の中間まとめとして、日本物理学会欧分誌の超伝導特集号に、これまで行ってきたβパイロクロア酸化物の超伝導とラットリングに関するレビューを執筆した。我々の研究によってこの物質の超伝導の重要性が認識された結果である。また、2009年に出版された論文「Rattling-induced superconductivity in the β-pyrochlore oxides AOs_2O_6」(Y.Nagao,J.Yamaura,H.Ogusu,Y.Okamoto and Z.Hiroi : J.Phys.Soc.Jpn.78,064702/1-21,2009)が2011年度の第17回日本物理学会論文賞を受賞した。 本年度の研究成果としては、βパイロクロア酸化物と同様にラットリング現象を示すスクッテルダイト化合物ROs_4Sb_<12>に関する研究が挙げられる。様々なRイオンのラットリングに関して、単結晶X線回折実験から原子振動パラメータを決定し、Rイオンサイズについて系統的な変化を観測した。これをβパイロクロア酸化物のAイオンのラットリングと比較することにより、新たな知見を得た。確かにスクッテルダイト化合物でもラットリングの兆候があるが、βパイロクロア酸化物と比べて明らかに小さく、後者の特異性が明確となった。 一方、βパイロクロア酸化物における新規な現象発見を目指して、Aサイトの元素置換実験が進行中である。例えば、Kの代わりに、Ba^<2+>,MH_4^<1+>,H_2O、H_3O^+イオンなどをカゴに挿入する事が可能となった。その結果、どの場合においてもラットリングによる低エネルギー励起が抑えられ超伝導は完全に消失することが分かった。さらに、H_3O^+の場合にはプロトン伝導と特異な誘電緩和が観測されている。カゴ状構造の特徴を活かした新たな物性探索が進むものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
βパイロクロア酸化物におけるラットリングと超伝導の関係を整理し、その概要を理解することができた。 成果をレビュー論文として出版した。βパイロクロア酸化物における新規な現象発見を目指して、Aサイトの元素置換実験を行った。Kの代わりに、Ba^<2+>,NH_4^<1+>,H_2O、H_3O^+イオンなどをカゴに挿入する事が可能となり、どの場合においてもラットリングによる低エネルギー励起が抑えられ超伝導は完全に消失することが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットリングを直接観察するためには、中性子実験が必要である。しかしながら、現在得られている単結晶の大きさでは実験が困難である。よって、より大きな単結晶を得るために、合成条件の最適化と長時間保持による育成を行う。予定通りに進まない場合には、小さな単結晶を並べて実験を行う工夫をする。さらに、新たなAサイト元素を有する物質の合成を試みる。特に、ラットリングする原子・イオンの形状の効果を調べる。また、カゴ内間をイオン伝導する物質系の探索を行う。
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