2010 Fiscal Year Annual Research Report
ストロンチウム-銅-酸素からなる高温超伝導体の合成と酸素原子整列によるTcの向上
Project/Area Number |
22340094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 慎一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
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Keywords | 新高温超伝導体 / 酸素ドーピング / 頂点酸素原子整列 / 非希土類元素化合物 / Tc=98K |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の一つSr_2CuO_<3+δ>は、最初に発見されたLa系と同じK_2NiF_4構造をもち、単位胞にCuO_2面を1枚含む。酸素原子そのものがドーパントであり、この酸素を規則整列させることで超伝導転移温度T_cはLa系の倍以上、1層系としては最高の液体窒素温度77Kを20Kも上回わる98Kにも達することを本研究代表者を含むグループが実証した。この物質は、次の点で、他の銅酸化物高温超伝導体にない優位性をもつ;(1)Sr,Cu,Oの3種類の元素だけで成り立つ、(2)これら3種類の元素には毒性がなく、また希土類や希少金属元素を必要としない。しかしながら、純粋な単一相の試料作製が難しく、その物性研究が殆ど進んでいない。本研究は、この物質の単相試料の合成と、それにより物質の基本パラメーター、ドーパント酸素原子の分布とドーピング量δの決定を行うことを目的としている。 Sr_2CuO_<3+δ>は高圧下でのみ合成可能である。更に、酸素過剰の酸化物であるため十分な酸素量の供給が必要で、合成条件に様々な制約がつく。現在の最適合成条件は、6GPa、1100℃である。従来、酸化剤としてKClO_4が用いられていたが、SrO_2を酸化剤にすることで、不純物相や酸化剤の汚染を除去することに成功した。合成された試料は、ほぼ100%K_2NiF_4構造からなる。しかし、超伝導体積分率は20から30%に向上したものの、未だ非超伝導部分が大半であり、「単相」試料とは言い難い。H22年度の研究から、ドーパント酸素の整列によると考えられる特定の超構造を示す部分が超伝導相であることがわかった。熱処理条件や過剰酸素の調整により超伝導相を増やせる可能性がある。また、Srの一部をBaに置換すると、熱処理を経なくても超伝導相が生成され、短時間の熱処理で超伝導体積分率が向上することがわかったので、このBa置換法を発展させ、超伝導体積分率の増大を図っている。
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