2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストロンチウム-銅-酸素からなる高温超伝導体の合成と酸素原子整列によるTcの向上
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22340094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 慎一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
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Keywords | 新高温超伝導体 / 酸素ドーピング / 頂点酸素原子配列 / 非希土類元素化合物 / Sr214単結晶 / 局所構造とTc |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の一つSr_2CuO_<3+δ>は、最初に発見されたLa系と同じK_2NiF_4構造をもち、単位胞にCuO_2面を1枚含む。酸素原子そのものがドーパントであり、この酸素を規則整列させることで超伝導転移温度TcはLa系の倍以上、1層系としては最高の液体窒素温度77Kを20Kも上回わる98Kにも達することを本研究代表者を含むグループが実証した。この物質は、次の点で、他の銅酸化物高温超伝導体にない優位性をもつ;(1)Sr,Cu,0の3種類の元素だけで成り立つ、(2)これら3種類の元素には毒性がなく、また希土類や希少金属元素を必要としない。しかしながら、純粋な単一相の試料作製が難しく、その物性研究が殆ど進んでいない。本研究は、この物質の単相試料の合成と、それにより物質の基本パラメーター、ドーパント酸素原子の分布とドーピング量δの決定を行うことを目的としている。 H23年度は、高圧・高温下での合成を継続し、最適合成条件を探求したが超伝導体積分率の大きな向上は実現しなかった。同時にSr_2CuO_<3+δ>の単結晶成長の試みを開始した。CuO一次元鎖の物質Sr_2CuO_3の単結晶をフローティングゾーンで合成し、それを高圧・高温・高酸化雰囲気下でK_2NiF_4構造に変換することに成功した。この変換のために様々な酸化剤を試し、KClO_4が最も適していることを見出した。この酸化剤はClを含むためのSr_2CuO_2Cl_2が合成された可能性があるが、成長した結晶の格子定数から、Clを含まない所期の物質であることを確認した。Tcは未だ40Kで、更に改良の余地があるものの、電気抵抗率等物性測定が初めて可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Sr_2CuO_<3+δ>の単相試料の合成は極めて難しく超伝導体積分率は30%に留まっている。これは同じK_2NiF_4構造でも頂点酸素原子の配列パターンが微妙に具なるものが少なくとも3種類あるためである。従って、それらのうち1つだけを結晶全体にわたって実現する条件をつきとめるには更なる、かつ膨大な実験を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の困難を克服すべく、H23年度から、より精度の高い解析が可能なSr_2CuO_<3+δ>の単結晶成長に的を絞り、その成長条件を模索することに精力を傾注することにした。これにより未だ誰もなしえていないこの物質の基本的な物性測定が可能になるものと考えている。
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