2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピンホール効果を用いた5d電子系酸化物におけるスピン・軌道相互作用の学理構築
Project/Area Number |
22340108
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松野 丈夫 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 専任研究員 (00443028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福間 康裕 独立行政法人理化学研究所, 量子ナノ磁性研究チーム, 副チームリーダー (90513466)
藤原 宏平 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (50525855)
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Keywords | 強相関係 / スピン・軌道相互作用 / 5d電子系 / スピンホール効果 / スピントロニクス |
Research Abstract |
5d遷移金属酸化物におけるスピンホール効果の検出に取り組んだ.スピンホール効果は非磁性体に電流を流すことによりスピンが蓄積する現象であり,スピン-軌道相互作用に起因する特異な輸送現象として注目されている.デバイス材料として未開拓の5d遷移金属酸化物に対し微細加工技術を駆使することにより,ルチル型IrO_2の細線(線幅およそ200nm)からなる面内スピンバルブ構造を作成した.その結果IrO_2に対して室温でスピンホール効果を観測し,遷移金属酸化物におけるスピンホール効果を初めて実証した.その大きさはスピンホール角にして4×10^<-3>程度と,純金属の中でも大きいとされるPtと同程度以上であった.これらの結果はイリジウム酸化物においてスピン・軌道相互作用が支配的であることを輸送現象の観点から初めて実験的に見出したという意義を持つ 並行して特異なスピンホール効果の舞台となりうる5d電子系酸化物の探索的な薄膜合成を行った.イリジウムが層状ハニカム格子を組むNa_2IrO_3では量子スピンホール効果が観測可能であるとの理論的予測がなされている.Na_2IrO_3に対して不整合の大きいAl_2O_3(0001)基板上にMgO(111),Mg_<0.8>Ca_<0.2>O(111)と二重のバッファ層を堆積させることにより格子定数のチューニングを行い,c軸配向Na_2IrO_3単結晶薄膜を作製することに成功した.Na_2IrO_3の光学伝導度スペクトルは1.5eV以下の領域に二つのピーク構造を持つ.これらはIr^<4+>を含む他のモット絶縁体酸化物,Sr_2IrO_4,Ir_2O_4などと定性的に同じであり,スピン・軌道相互作用の支配的なモット絶縁体の普遍的な特徴と考えられる
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Research Products
(8 results)