2012 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学ガラス転移を示す統計力学模型の探索と特徴抽出
Project/Area Number |
22340109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々 真一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30235238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 孝治 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80282606)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ガラス / 統計力学 / レプリカ対称性 |
Research Abstract |
熱力学ガラスとは、平衡統計力学の範囲でブラッグピークがないままに並進対称性が破れる相である。有限次元系において熱力学ガラス相を示す数理模型を探索することが大きな目標のひとつだった。そして、昨年度の終わりに見出した模型について、今年度に詳しく調べ、その強い候補を与えることが分かった。これについては、論文として出版した。今年度に入って詳しく調べることで以下の点が明らかになった。 1)見出した模型において、ガラス相への転移点近くの振る舞いを詳細に調べた。小さいサイズの範囲だが異なるサイズのエネルギーゆらぎのデータから有限サイズスケーリングを行い、2次転移ではなく潜熱をともなう1次転移である可能性が高いことになった。 2)転移点近くの動力学を詳細に調べた。ランダム1次転移シナリオで期待されているような「中間領域でのプラトー」を示す温度領域は観測されず、不規則パタンへの凍結は相関時間の発散がないままに生じる。ただし、平衡への緩和時間は転移点近くで極端に大きくなっている。 また、ガラスの平衡状態への緩和促進などを念頭において,詳細釣り合い条件に依らないマルコフ連鎖モンテカルロ法の開発を行った.モデルケースでの例から,秩序変数に共役な外場を確率的に振動させることにより,外場のない平衡状態への緩和が詳細釣り合い条件を緩めることにより短くなることを解析的に確かめることができた.さらに,ランダムグラフ上の格子充填問題において,レプリカ対称性の破れの実現とある種のアルゴリズムの適応限界が完全に一致することを解析的に示した.ガラス理論の基礎を与える可能性のあるレプリカ対称性の破れの予言をレプリカ法に頼らない観測量から検出した一つの例と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱力学ガラスの模型を具体的に構成でき、それが論文として出版された意義は大きい。現在までに、有限次元空間において熱力学ガラスを示す候補として認知されているのは提案した模型だけである。実際、この問題に興味をもつ海外の先端的研究者からは、セミナーや議論の招待を複数受け取っている。しかし、その一方、候補にとどまっており、理論的な理解をさらにすすめる必要がある。また、転移のタイプが1次転移であるなど、「ガラス」の理想化としては不満足な状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
提案した模型に対して理論的な解析を続け、熱力学ガラスが実現するための条件についての理解を深める。また、ランダム1次転移(2次転移)か1次転移かという転移のタイプを決める要因についても理解する必要がある。さらには現象の内部自由度依存性についても検討する。 詳細釣り合い条件を緩めたモンテカルロ法の研究から,実験的にも調整可能な外場を調整することにより,系の緩和を促進する可能性が示唆される.これをガラス系に展開できれば,実験的な熱力学ガラス転移を抽出に向けた一歩になることが期待できる.また,近年,空間結合系と呼ばれる一連の統計模型がガラス化を阻害する性質をもっていることが示唆されている.格子充填模型において,空間結合性の導入によりガラス化の制御を模索する.
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Research Products
(6 results)