2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70251402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 統太 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50280871)
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Keywords | 量子ドット / 散乱問題 / 開放量子系 / 共鳴状態 |
Research Abstract |
相互作用がある量子ドットの散乱問題を厳密に解き、それを基に有限温度非平衡バイアス下での電気伝導を議論しました。今年度は、昨年度の成果を更に発展させ、並列ドットや、スピンのあるアンダーソン模型についても散乱波動関数のベーテ仮設解を用いて厳密に議論しました. 一方で、一般の形の量子ドットについても厳密な数式展開の後に数値的厳密に電流を計算するという手法を考案しました。これによって、有限系なら任意の相互作用の量子ドットについて、数値的厳密に電気伝導を計算する道が開けました。 本来の研究目的から派生した問題として、量子ドットのリウビリアンの複素固有値問題も議論しました。量子ドットのハミルトニアンの複素固有値問題は、これまでに申請者がかなり明らかにしてきました。それによると、半無限の導線が付随した開いた量子系では、共鳴状態が時間反転対称性を自発的に破り、その複素共役である反共鳴状態とペアになって初めてシュレーディンガー方程式の時間反転対称性が回復されます。 ただし、この議論では純枠状態の減衰についてしか議論できません。そこで、平衡状態への緩和を議論するために、リウビリアンの複素固有値問題に取り組みました。リウビリアンの非自明な共鳴状態は混合状態の減衰を表すと期待されます。我々は数値的厳密な計算からハミルトニアンの複素固有値の組み合わせだけでは表せない非自明な複素固有値が存在することを実際に示すことに成功しました。これは、長い研究の歴史の中で初めてのことです。これまでは主に摂動論で議論されてきましたが、摂動を有限で切断した途端に時間反転対称性が破れてしまうため、時間反転対称性の自発的破れを示したことにはなっていませんでした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ドットの電気伝導を議論してきました。ベーテ仮設解の散乱波動関数を用いた厳密な議論は当初の目的通り順調に進んでいます。また、一般の量子ドットに対する数値的厳密なアルゴリズムの開発もほぼ終えています。ただし、これを一般に公開できるような計算コードの形にするところまでは達成できませんでした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ベーテ仮設解の散乱波動関数を用いた厳密な議論と、一般の量子ドットに対する数値的厳密なアルゴリズムの開発という二本立てで進めます。前者については、適用できる場合を徐々に増やすことによって、実験にも部分的に対応できるような予言をすることを目指します。後者については、いよいよ一般に公開できるような計算コードの形にすることを目指します。
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Research Products
(17 results)