2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340112
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中原 明生 日本大学, 理工学部, 准教授 (60297778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大信田 丈志 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50294343)
狐崎 創 奈良女子大学, 研究院自然科学系, 准教授 (00301284)
大槻 道夫 青山学院大学, 理工学部, 助教 (30456751)
松尾 洋介 日本大学, 理工学部, 研究員 (40611140)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 破壊の制御 / レオロジー / 塑性流体 / メモリー効果 / 亀裂パターン / 乾燥破壊 / コロイド |
Research Abstract |
粉と水の混合物における乾燥破壊現象に関し、我々は、記憶効果を用いて破壊の制御を行う研究を進めてきた。粉が多く水が少ない濃密な混合物(ペースト)は塑性を持つがゆえに、乾燥前に加えられた揺れや流れなどの力学的外場がペーストに記憶され、その方向が、乾燥亀裂パターンの異方性として現れる。 過去の実験で制御できていたのは亀裂の方向のみだったが、今回、新たな実験により、亀裂の進行方向だけでなく亀裂の発生位置をも制御できる可能性を示した。 具体的な手法としては、乾燥前に加える振動が今までは水平方向に限られていたのに対し、新たに鉛直加振の実験をおこなって結果を比較した。まず、水平加振では、系の並進対称性を反映して、記憶も一様であり位置情報は含まれていないことを確認した。 他方、ペーストを鉛直加振すると、振幅や振動数などの加振条件に応じて、縞状あるいは格子状の定在波(Faraday波)が発生し、並進対称性が破れる。ペーストを短時間鉛直加振したあと振動を止め、ペースト表面が平らに戻った状態で静置乾燥させると、乾燥後に生じる亀裂は、方向も位置も最初のFaraday波と相関があることが分かった。縞状のFaraday波に対しては、Faraday波の節にあたる領域のほうが腹にあたる領域よりも亀裂の発生確率が高かった。格子状のFaraday波の場合は、亀裂の方向は直感的な格子の方向と45度の角度をなすという非自明な結果が得られ、これも亀裂が波の節の領域にできやすいためであることを実験的に確認した。 節の位置に亀裂ができやすいという実験事実は、記憶効果で重要なのは水平方向の振動であって垂直方向の振動ではないことを意味する。この知見は、一方ではペーストの記憶効果の機構に関する理解の手がかりを与えるものであり、他方では亀裂の位置の制御の可能性を示すことで新しい工学的応用の道を開くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまではペーストのメモリー効果を用いて亀裂の進行方向を制御してきたが、どこに亀裂が発生するかその位置までは制御できなかった。今回、ペーストを鉛直加振し、発生したFaraday waves の形状を利用して亀裂の発生位置を制御する方法は、破壊の制御法の開拓にとって大きな進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、乾燥前のペーストに振動や流れを加えることにより亀裂の進行方向や発生位置を制御する方向で研究してきたが、いったん記憶させた記憶を消すことはできなかった。正確にいうと、別の外場を加えて記憶を書き換えることはできたが、記憶そのものを全部消して状態を初期化することはできなかった。今後の研究の方針として、いったん蓄えられた記憶を消すために、ペーストを加熱したり、ペーストに超音波を加えるなどして、ペーストを構成する粒子群に直接振動を加えることにより記憶を消して初期化する研究を推進していく。
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