2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22340113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久我 隆弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60195419)
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Keywords | 簡便な単一光子源 / 半導体ナノ粒子 / ポリマー薄膜 / 1粒子計測 / アンチバンチング / 量子暗号 / 量子情報処理 |
Research Abstract |
平成23年度は、半導体ナノ粒子(コロイド量子ドット)を懸濁したポリマー(PMMA)トルエン溶液をガラス基板(プリズム表面)上に滴下、トルエンを揮発させたPMMA薄膜を作成し、PMMA薄膜中に固定された少数のコロイド量子ドットからの発光特性を光子計数法で測定した。発光の強度相関を求めた結果、単一コロイド量子ドットからの発光がアンチバンチングしていることを確認した。これは、発光には必ず1光子しか含まれていないことを意味しており、この段階で、「簡便な単一光子源」は完成したといえる。 これまでの単一光子源は、パラメトリック蛍光、中性原子トラップやイオントラップされた単一原子(イオン)からの発光、半導体量子井戸と微小共振器構造をもつ高機能素子(エピタキシャル量子ドット)からの発光などであるが、いずれも作成や取り扱いに高度な技術を要すため、必然的に高価となりまた用途も限られたものであった。 それに対して今回完成させた単一光子源は、ありふれたポリマーと化学的な合成法で大量に作成できるコロイド量子ドットを利用しているため、非常に安価でありかつ取り扱いも容易なものである。したがって、単一光子源を大量に作成することが可能となる。単一光子源が大量に利用可能となれば、量子暗号や量子情報処理のプロトコルおよびアルゴリズムに対する制約を大きく緩和することができるため、これらの実用化を目指した実験的研究に大いに役立つものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の第一の研究課題である「簡便な単一光子源の開発」に成功した点において、ほぼ計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に「簡便な単一光子源」は完成したといえるが、この光源は等方的な発光を対物レンズで集めるだけなので、集光効率は0.0l~0.001程度である。つまり、ある時刻に単一光子が必要とされても、100分の1以下の確率でしか取得できない。これは応用的には大きな障害であるため、今年度はオンデマンド性の確立に挑戦する。具体的には、コロイド量子ドットを含むPMMA薄膜を高反射率鏡上に作成し、さらにもう一枚の反射鏡を設けることで共振器を構成する。共振器のモード体積を非常に小さくして、量子状態の制御が可能となる強結合条件を実現させれば、コロイド量子ドットからの発光は共振器モードに選択的に放出される。現在、ファイバー端面を凹面加工し高反射率コートした鏡を使った微小共振器を作成しており、最終的には発光の50%以上をファイバーに結合させ、オンデマンドで単一光子を供給できるシステム構築を目指す。
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