2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340117
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
熊倉 光孝 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 紀夫 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30134654)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レーザー冷却 / 磁気トラップ / Bose-Einstein凝縮 / レーザー光学 / 原子光学 / 原子波 / 位相制御 / 二重磁気光学トラップ |
Research Abstract |
本研究グループでは二重磁気光学トラップと呼ばれる手法によりRb原子を超高真空領域の磁気トラップに導入し、RF蒸発冷却によってBose-Einstein凝縮を達成している。しかしながら、現有の装置ではBECの生成に1回当たり約2分の時間が必要で、BECの操作による回路構築には困難な実験条件である。そこで本年度、磁気補正コイルの追加やRb蒸気圧の最適化、原子移送用レーザーの特性改善などによって磁気トラップへの原子移送効率の向上を図ると共に、蒸発冷却用RFのノイズ特性の再検討や磁気トラップ冷却装置の性能改善などにより、蒸発冷却過程の最適化を試みた。その結果、移送効率がレーザーアライメントや原子のトラップ位置などの僅かな実験条件の変化によって大きく変動することや、磁気コイルの温度変化によって冷却効率が大きく低下しているなどの問題点が明らかとなった。これらの改善を順次進めることで実験装置の安定度は向上してきたが、生成時間は未だ1分程度であり、今後、大幅な時間短縮には、電源ノイズの抑圧とトラップ装置の温度安定化を更に進めることが効果的であることが分かった。 本年度は上記に並行してBECの位相制御に使用するレーザーシステムの開発も進めた。BECには、構成原子の誘導ラマン散乱によって、遷移に使用するレーザービーム対の波面位相差を光学的に印加することができる。この方法でソリトンや量子渦構造などに相当する様々な位相構造をBECに印加するため、空間位相変調器によるレーザー波面の位相制御を行い、制御特性を実験的に調べた。その結果、BECのサイズは一般的には10μm程度であるが、ダブレットレンズを用いた通常の集光光学系では30μm程度の空間スケールがほぼ限界で、BECへの適用にはトラップの緩和によるBECサイズの拡大や、位相印加時に新たな位相補正の追加が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bose-Einstein凝縮体(BEC)生成装置の効率化・高速化が、現時点での本研究の最も大きな困難となっているが、改善に必要な実験条件などは次第に明らかになってきており、今後、解決できるものと考えている。一方、BECの操作に必要なレーザーシステムの準備は比較的順調に進んでおり、両者を組み合わせた新たな展開が近い時期に実現できると予想できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での最大の課題はBose-Einstein凝縮体生成装置の効率化・高速化である。これについては本年度の研究から明らかになった磁気トラップ電源のノイズ抑圧と磁気トラップ装置の温度安定化、レーザービーム入射法の改善などを更に進めて改善する計画である。これらによって30秒程度に時間を短縮したのち、これまでに準備したBEC制御用レーザーシステムによって、以下の実験に着手する。 (1) 非共鳴レーザー光によるBECの変形によって回路の構築を目指す。 (2) 位相制御レーザーによってBECへのソリトン導入を行う。第一段階としては通常の葉巻型BECに対して実験を行い、外場によるソリトンの運動変化を観察し、原子波の位相変化に対するインジケータとしてソリトンが機能することを実証したい。
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