2011 Fiscal Year Annual Research Report
衛星搭載アクティブセンサーによる雲微物理特性導出とその生成機構の解明
Project/Area Number |
22340133
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡本 創 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10333783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 孝 東海大学, 工学部, 准教授 (70408029)
石元 裕史 気象庁気象研究所, 気象衛星, 主任研究官 (70281136)
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Keywords | 雲物理 / レーダ / ライダ / エアロゾル / 氷晶雲 / 大気大循環モデル / 消散係数 / 放射特性 |
Research Abstract |
本課題では、衛星に搭載されたアクティブセンサである雲レーダとライダを中心に、氷雲と水雲を解析し、微物理量の全球解析を実施すること、それらから雲微物理特性の生成のメカニズムを解明することを目的としている。昨年度に引き続き、本年度もCloudSatとCALIPSOを用いた雲域抽出手法、雲粒子タイプ識別(水粒子、3次元ランダムに配向する氷粒子と水平面に配向する板状氷粒子の識別)、氷粒子微物理特性(有効半径、雲水量・雲氷量、個数密度)の解析手法を実施した。氷粒子に関しては、レーダおよびライダの片方のセンサで雲域を検出できない場合にも微物理特性を抽出可能にする改良を行った(Sato and Okamoto 2011)。この特徴の一つは最適化手法であるLevenberg-Marquadt法を導入したことであり、誤差の影響の最小化が達成できた。全球解析の結果、有効半径がほぼすべての緯度帯で、上層では30-40ミクロン程度の大きさであること、下層に行くに従って大きく成長することが判明した。氷水量は、下層では1立方メートルあたり0.1g以上で、レーダとライダで同時に観測された雲域のみを対象とする場合と比較して1桁程度大きかった。ライダ光に対する非球形散乱理論取り扱いにも大きな進展があった。新しい散乱理論を用いて、有効半径や氷水量に加え、平板状粒子の濃度に言及可能なアルゴリズムの改良を行うことができ、実際に鏡面散乱の卓越する領域で、平板状氷粒子の濃度が数十%程度と現実的な値を示した(Okamoto et al., 2012)。下層雲のライダ光による後方散乱の取り扱いにも大きな進展があった。精度の高い計算手法の開発を行うことで、波長532nmと1064nm波長の後方散乱係数の比がほぼ1となることを示すことに成功した。これによってCALIPSOの波長1064nmの1ミクロンの校正手法も確立されたと考えている。雲微物理特性には、エアロゾルが深く関与しているが、本課題ではCALIPSO衛星を用いたエアロゾルの解析も実施した。エアロゾル領域の検出手法に大きな進展があり、従来と同じ水平解像度である水平3.3kmでも、wavelet法を導入することで、SN比を倍以上向上させ、エアロゾル領域の検出が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
下層雲のライダ光の計算は誤差が大きく精度の高い計算は困難であると考えていたが、今回バックワードモンテカルロ法の計算手法を改良することで、信頼性の高い計算結果を得られることとなった。下層雲の波長比が多重散乱の影響を考慮しても1に近いという結果を得て、CAHPSOで従来信頼性が低いとされていた赤外波長も、再校正により解析に使用可能であるという見通しが初めて得られた。またこの成果から、可視と赤外波長を両方用いる氷粒子とエアロゾルの解析手法の開発に一気につなげることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
下層雲を用いたCALIPSOの波長1064nmの再校正手法に基づいて、全球の観測データに関しても再解析を実施する。それに基づいてエアロゾルの検出、各種エアロゾルタイプ毎の消散係数の精度の高い抽出を行う。またライダ光の鏡面散乱のおきている領域や、下層雲からの後方散乱特性、についても信頼性の高い解析手法が得られたので、全球の数年にまたがる衛星データの雲とエアロゾルの長期解析と検証を実施する。これらやMODISセンサによる雲解析結果、AIRSから得られた水蒸気量解析結果を合わせて、大気大循環モデルにおいて再現された雲微物理特性の検証と生成メカニズムの解析を行っていく方針である、
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Research Products
(24 results)