2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本の温暖化率の算定に関わる都市バイアスの評価と微気候的影響の解明
Project/Area Number |
22340141
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
藤部 文昭 気象庁気象研究所, 予報研究部, 室長 (60343886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 直子 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (70354503)
日下 博幸 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10371478)
飯塚 悟 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40356407)
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Keywords | 気候変動 / 都市気候 / 微気候 / 気温観測 / 都市バイアス / ヒートアイランド / 都市キャノピーモデル / LES(Large-Eddy Simulation) |
Research Abstract |
1.バックグラウンドの温暖化率の算定と都市バイアスの評価 1)前年度にディジタル化された区内観測の気温データをアメダスと接続し,気温変化率を評価した。1916~2010年のバックグラウンドの気温上昇率は0.88℃/(100年)と算定された。一方,都市化の程度が比較的小さい地点でも若干の都市バイアスが認められた。 2)首都圏の市街化に伴う過去30年間の気温と風速の変化について,土地利用,人工排熱およびビル群の形状分布の変化を与えた数値実験を行った。都市域では気温の上昇に加えて風速の減少傾向があるが,局地風の変化や人工排熱の増加などは風速の増加要因にもなり得ることが示唆された。 2.気候値に対する微気候的影響の解明 1)気象庁の露場内と庁舎屋上に設置した温湿度計による観測を継続し,データの統計処理に着手した。季節によらず露場内の気温が庁舎屋上よりも高い傾向があり,特に日最高気温の差が大きかった。 2)観測所周辺の樹木等が気温観測に及ぼす影響を連続的な野外観測により調査した。林の影響は樹高の2倍程度の距離まで現れ,日最高気温のほうが日最低気温よりも影響が大きかった。また,日射がある場合,防風ネットなど遮蔽物の風下側ではその高さの1~2倍の範囲で気温が高くなるのが認められた。 3)アスファルト道路が周辺の気温に対して及ぼす影響をLESを用いて評価した。盛夏期の快晴日13時の条件において,道路の風下側10mにおける高さ1.5mの気温は風上側よりも平均0.15~0.25℃程度高く,弱風時ほど気温差の変動が大きかった。 4)22年度に着手した建物解像LESモデルへの放射過程の組み込みを完了し,対流・放射連成LESモデルを開発した。 代表的な気象条件・建物配置条件のもとで,開発した対流・放射連成LESモデルを用いて風通しの違いによる日だまり効果と,日射の影響の違いによる日だまり効果を試算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去資料のディジタル化は22年度にほぼ完了し,23年度にはこれを利用したバックグラウンド気温変動の評価がなされた.微気候的影響の観測は予定通り行われ,予備的な解析結果が得られた.モデル研究もほぼ計画通り進捗し,アスファルト道路が気温観測に及ぼす影響の計算が行われた。以上のように,当課題はほぼ計画通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は本計画の最終年度となる。当初計画に従って研究を進め,成果を取りまとめることとする。具体的には,気温長期変動における都市バイアスを定量評価を進めるとともに,気象庁構内に設置した温湿度計による微気候観測の継続・解析を行い,これをメソモデルのシミュレーション結果と比較してモデルの都市キャノピー表現の妥当性を考察する。また,前年度までに開発した対流・放射連成LESモデルを用いて,様々な気象条件、建物配置条件,地表面被覆条件を変更したケーススタディを行い,「陽だまり効果」のメカニズムの定量的評価を目指す。
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