2011 Fiscal Year Annual Research Report
太古代大型微化石群からさぐる初期地球の生態系進化と生物多様性
Project/Area Number |
22340149
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉谷 健一郎 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20222052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80262848)
山本 鋼志 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183689)
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Keywords | バルバートン山地 / 太古代 / チャート / 微化石 / ピルバラ |
Research Abstract |
西オーストラリアピルバラクラトンで採取した34億年前のスティルリープールチャート試料の微化石様構造のデータ採取と統計解析、海外研究協力者と共同して微化石の個別同位体分析を行った。既存の試料から新たに作成した薄片中に、保存状態の良い、複数の部屋からなる60μmの直径を有する球状微化石を確認することができた。また20~30μmの球状微化石が密集してコロニーを形成しているものも見つかった。さらにはフランジを有するレンズ状微化石でその表面に微小でな稜状構造が認められるものを発見した。また1000個近くの微化石についてサイズデータを採取し、球状微化石が少なくとも3つの分類群からなること、レンズ状微化石の場合、産状のバリエーションが多いにも関わらず、区別が難しい事が分かった。これらの球状の微化石とレンズ状の微化石について、二次イオン質量分析計を用いて、炭素同位体比の直接分析を行った。球状微化石とレンズ状微化石で、統計上有意な差が認められた。 南アフリカへの調査を平成24年6月に繰り越し申請により行った。南アフリカ・バルバートン山地のフィールドでは、スタンフォード大学Donald Lowe教授、ルイジナア州立大学Gary Byerly 教授らの案内で、西オーストラリア・ピルバラクラトンで見つかったものと形態が酷似した大型微化石の産出地点(34億年前の地層でクロンベルグ層と呼ばれる)を調査した。10個程の太古代黒色チャートを採取し、日本に持ち帰った後薄片を20枚程度作成し、観察した。残念ながら現時点で微化石は見つかっていない。また上記の黒色チャートの他に、大型球状化石が報告されている32億年前のムーディーズ層の黒色頁岩、メンドン層群の黒色チャート、さらにフィグツリー層の縞状鉄鉱層等の採取を行った。ピルバラクラトンの同様の岩石と比較する上で基調な試料を採取することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目論みは、1992年にMaud Walshによって報告された紡錘状(実際はピルバラクラトンのものと同様にフランジを持つ円盤状の可能性が高い)の大型微化石を南アフリカから再発見することであったが、薄片観察の限りでは確認されていないため、上記の様な自己評価となっている。しかしながら、これはバルバートン山地の黒色チャートは有機物含有量が高く、微化石がマトリックスと同化して認識しづらいという点に起因することも考えられる。一方、ピルバラクラトン産微化石の炭素同位体比の個別直接分析では予想もしなかった大きな成果を挙げる事ができた。この点は評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は薄片未作成の試料を順次作成するとともに、既に薄片作成とその観察を終えた試料について、塩酸-フッ酸分解による微化石抽出を試みたい。ピルバラクラトンの含微化石に対する同様の処理によって大量の微化石が抽出することができたので、この方法は有機物含有量の高いバルバートン山地試料には有効であると期待される。一方ピルバラクラトンの試料については質の高いデータが得られているので学会での発表や論文作成につなげたい。
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