2011 Fiscal Year Annual Research Report
現世および化石カキ礁の形成過程から解明する古環境とカキ類の古生態変遷
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22340153
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
安藤 寿男 茨城大学, 理学部, 教授 (50176020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七山 太 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (20357685)
近藤 康生 高知大学, 自然科学系, 教授 (90192583)
岡田 誠 茨城大学, 理学部, 准教授 (00250978)
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 教授 (10272098)
嵯峨山 積 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 地質研究所, 研究主幹 (90446352)
内田 康人 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 地質研究所, 主査(沿岸保全) (60465961)
秋元 和實 熊本大学, 沿岸域環境科学研究教育センター, 准教授 (70222536)
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Keywords | カキ類の進化 / カキ礁 / タフォノミー / 古生態 / 白亜紀 / 現世 / 汽水生底生生物群集 / 古環境変動 |
Research Abstract |
平成22年度に行った,ジュラ紀後期~現世のカキ化石密集層やカキ礁の分布の文献調査に基づいて,完新世のカキ礁が知られている,厚岸湖と白糠町パシュクル沼に焦点を当てて調査を行った.厚岸湖の現生カキ礁は1980年代に死滅しているので,厚岸港湾調査工事で掘削されたボーリング試料と,公共工事のボーリング調査記録から,カキ礁が成立した厚岸湖の過去1万年間の形成史(海進,バリアーシステムの形成時期など)を推定し,厚岸湖のカキ礁の起源につながる情報を探索した.また湖内の澪筋に沿って音波探査を行い,潮汐平底三角州の内部構造やカキ礁の地下構造を把握した.これらの成果のうちバリアーシステムの発達様式と海水準変動復元について学術誌に論文投稿した. パシュクル沼では,5本のトレンチ掘削を行い,カキ礁の形態・産状について調べた.湖岸露頭と5本の柱状における垂直・水平層序分布から完新統の堆積史を復元できる.化石密集層の貝類は,層準による組成変化はいくらかあるが大きな変化はなく,縄文海進最高期付近に道東が黒潮の影響を受けて暖流系種が卓越したことを示す.層厚2m弱のカキ化石密集層は,離弁殻や破片が水平に集積した他生的なカキ殻層層の上に,直立合弁殻の自生密集層が重なっており,少なくとも4回互層している.自生層準は上限が他生化石層で浸食的に覆われており,転倒した合弁殻の方向や配列は陸側を向くものが多い.貝殻の炭素14 年代,カキ化石層より上位の泥炭層に含まれる数枚の遡上津波砂層の存在を総合すると,パシュクル沼のカキ化石層は,約8,000 年前からの約千数百年間における数百年周期で襲来した数回の津波の影響を受けて形成されたことが示唆される. また,昨年来進めてきた香川県の上部白亜系和泉層群の北縁相に含まれるカキ化石密集層の産状記載については,カキ礁形成史を詳細に復元した成果が論文として出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標の一つとした厚岸湖底ボーリングは諸般の事情により実施を見送ることとしたが,それを補うために,既存の陸上ボーリング試料や調査情報を収集することで,厚岸湖のバリアーシステムの実態を明らかにすることができた.パシュクル沼のトレンチ調査は諸機関や分担者・協力者からの協力で充実した調査ができ,これまでにない貴重な情報から,カキ化石密集層が数百年周期で襲来した数回の津波の産物である可能性が新たに明らかとなり,大きな展開となった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はパシュクル沼での研究成果の取りまとめに取り組むが,新たな展開として,厚岸湖の北側の風蓮湖でも音波探査を行い,バリアーシステムの内部構造を把握するとともに埋没したカキ礁がないかを探査する.一方,九州の八代海南部の水深30mの海底で,我々の研究グループが3年前に調査した現生カキツバタ礁について,千葉県館山市にある完新統化石密集層と比較しながら新たに調査を行う.最終年度のまとめとして,道東のカキ礁の発達史について,分担者や協力者と情報交換しながら,炭素14年代などの新規貴重データを有効に用いた成果発表を行っていく.
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Research Products
(6 results)