Research Abstract |
星間分于雲で起こっている表面原子反応による分于生成は,下地(基板)であるアモルファス氷の存在によって,反応速度が大きくなることが明らかになっている.しかし,アモルファス氷の表面構造は全く明らかになっておらず,その構造解明が急がれる.本研究計画では,超高真空原子間力顕微鏡(AFM)の冷却システムを開発し,アモルファス氷の表面構造を観察する.並行して,反応速度論的データを取得し,双方の情報を用いることにより,極低温表面原子反応においてアモルファス氷が持つ触媒的効果の実体を解明する.これによって,分子雲での分子進化の全容解明に迫る. 平成23年度は,以下の研究を行う計画であった. 1.原子間力顕微鏡用試料冷却装置の作製 平成22年度に作製した液体ヘリウムクライオスタットおよびガス導入系を現有の超高真空原子間力顕微鏡に取り付け,試料の10Kまでの冷却が可能になるようにする.この装置を用いて,蒸着法で作製したアモルファス氷の表面構造を分子レベルで観察する. 2.速度論的データの取得 現有の極低温表面原子反応実験装置を用いて,引き統き,極低温表面原子反応の速度論的データ(反応速度定数,原子の表面拡散係数など)を取得する.特に,OH+H2→H2O+H, OH+HD→H2O+D, OH+D2→HDO+Dに着目する. 1.に関しては,液体ヘリウムクライオスタットおよびガス導入系の取り付けは終了し,蒸着法で作製したアモルファス氷の表面構造の観察が可能になった.しかし,現状では,最低到達温度が30K程度までしか下がっていない. 2.に関しては,上記反応の速度論的データならびに水素原子・重水素原子のアモルファス氷表面での表面拡散係数の測定に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にあげた2つの項目はおおむね達成できた.原子間力顕徽鏡の試料の最低到達温度が30K程度までしか下がっていないが.10Kと30Kで表面構造に大きな相違があるとは考えられないので,当初の目的は十分に達成され,研究は順調に進展していると考えている.
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