2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340162
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 友明 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (40312540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 工 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90214379)
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Keywords | 氷天体 / 高圧氷 / 塑性流動 / 結晶粒成長 / 放射光X線その場観察 / 顕微ラマンマッピング |
Research Abstract |
本研究では塑性変形実験、結晶粒成長実験、および原子拡散実験に基づいて、氷天体物質の高圧下における流動則を明らかにすることを目的とし、平成23年度は以下のような研究を行った。1)低温ガス圧変形装置を用いた2相系氷天体物質のレオロジー研究:CO_2氷が少量含まれたときの氷天体物質のレオロジーを理解するために、H_2O氷-CO_2氷2相系について、その流動則パラメーターである応力べき指数、活性化エネルギーおよびpre-exponential factorのCO_2氷成分比依存性を明らかにした。それを基に火星南極氷床の安定性について検討を行い、南極氷床に含まれうるCO_2氷成分比の最大値を制約した。2)放射光X線を用いた高圧氷の塑性変形および粒成長カイネティクス研究:放射光実験施設photon factoryにおいて放射光単色X線とD-DIAを組み合わせて用いることにより、常温300Kにおいて圧力4-10GPa、歪み速度1-7e-5s^<-1>の条件で氷VII相多結晶体の塑性変形実験を行った。これまでに流動則パラメーターの応力べき指数と活性化体積を制約し、氷VII相が4GPa付近では氷VI相と同等の流動応力を示し、圧力により粘性率が上昇することを明らかにした。これらの結果は太陽系外の大型氷惑星の内部流動を議論する上で重要である。またダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いて二次元X線回折斑点数変化を利用した氷VI相多結晶体の粒成長実験を1.5-2GPa,300-400Kで行い、特に融点直下の条件において顕著な粒成長を観測し、斑点数が時間とともに減少する時分割データを得た。3)顕微ラマンマッピングを用いた高圧氷の相転移応力の検出および原子拡散実験の検討:前年度に導入した低温顕微ラマン分光装置に今年度新たにマッピング装置を設置した。これを用いて高圧氷のVI-VII相転移にともなって生じる相転移応力や相転移歪みのラマン分光測定を行い、それらが相転移カイネティクスに与える影響について考察した。またこれらの技術を用いて、氷多結晶体のトレーサー拡散法による粒界拡散実験を行うための検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記1)および2)についてはおおむね順調に進展しており、学会発表を行うとともに投稿論文作成の準備をすすめている。3)については新たに導入した低温顕微ラマンマッピング装置を立ち上げ、高圧氷の相転移カイネティクス研究においてその有効性を確認したので、今後それらの技術を原子拡散実験に適用する。
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Strategy for Future Research Activity |
上記1)および3)の相転移実験については結果を論文にまとめ国際誌に投稿する。2)についても追加実験を行った上で論文投稿する。3)の原子拡散実験については、常圧下で粒径の異なる氷I相多結晶体を用いた粒界拡散実験、および高圧下でDACを用いた高圧氷多結晶体の原子拡散実験の両面から研究を遂行する。いずれも同位体を用いたトレーサー法を予定しており、ラマンによる同位体氷の定量性の検討も行う。
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