2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子ビーム多価イオントラップで創り出す模擬プラズマの分光学的研究
Project/Area Number |
22340175
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (50361837)
|
Keywords | EBIT / 多価イオン / タングステン / 分光計測 |
Research Abstract |
今年度は、前年度までに設置された可視分光装置及びEUV分光装置を用い、鉄多価イオンとタングステン多価イオンの発光スペクトルを観測し、その電子エネルギー依存性の測定を試みた。EIBTのイオン種は、希ガスや鉄・スズ・タングステンやビスマスなど選択することが可能であり、核融合プラズマで問題となっている炉材料の元素や、基礎データの不足している元素の多価イオンデータを取得することが目的の一つである。 前年度までのEUVスペクトルの観測波長範囲は10~30nmであったが、今年度は分光装置を改造し1nm~6nmに変更し、より高分解能.のスペクトルを取得することに成功した。しかも電子エネルギーを300~1500eVの範囲でスペクトルのエネルギー依存を観測することによって、18~35+価のタングステン多価イオンからの発光線を測定することに成功した。これにより、今年度はこのCoBITのデータと高温核融合プラズマからのタングステン発光スペクトル、特にASDEXやLHDのタングステンスペクトルと比較することにより、プラズマからの発光ラインを同定することに成功した。これらの成果は2011年Belfastで行われたThe 17^<th> International Conference on Atomic Processes in Plasmasの招待講演で報告された。またタングステン多価イオンの可視分光測定では、26価の禁制遷移を精度よく測定し、その遷移波長を決定し、理論解析によりそのラインの同定にも成功した。しかもLHDプラズマでその発光ラインも確認することにも成功した。 一方、鉄多価イオンの測定は、昨年度、Fe XIII,XIV,XVのそれぞれのライン強度比の電子密度依存性を測定し、衝突輻射モデルとの比較を行ったなかで、Fe XVのみ理論モデルとの不一致が見られた。そこで今年度はそのライン強度比の詳細な電子エネルギー依存性を測定したところ、共鳴現象を発見した。現在詳細な解析は進めている最中ではあるが、このような共鳴過程の報告は未だされておらず、非常に興味深い現象であり、集中的た研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定では電子エネルギーを高速に走査し擬似的なMaxwell-Boltzmann(MB)電子分布を創り出す実験を予定していたが、Fe多価イオンの発光強度比の共鳴過程の発見や高温核融合プラズマのスペクトルとの比較による同定の成功など予想外の成果が生まれており、現在実験テーマを再構築し強力に推進している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在Fe多価イオンの発光強度比の共鳴過程の発見やタングステン多価イオンの高温核融合プラズマのスペクトルとの比較による同定の成功などの予想外の成果が上がっている。これは非常によい傾向であるので、より強力に推進していきたい。また当初予定の電子エネルギーを高速に走査し擬似的なMaxwell-Boltzmann(MB)電子分布を創り出す実験は、現在すべての装置、検出器が設置・調整されている。今後は、各課題によるマシンタイム制を導入し、それぞれのテーマでそのマシンタイム時に集中的に実験を行い、次々と出てくる興味深い実験結果に対してパラレルに対応できる実験体制作りを行って研究を推進していく。
|
Research Products
(16 results)