2012 Fiscal Year Annual Research Report
電子ビーム多価イオントラップで創り出す模擬プラズマの分光学的研究
Project/Area Number |
22340175
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (50361837)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多価イオン / EBIT / タングステン / EUV分光 |
Research Abstract |
今年度は、前年度に引き続き、可視分光装置及びEUV分光装置を用い、多価イオンの発光スペクトルの観測を行い、特に電子エネルギー依存性の測定を試みた。EBITのイオン種は、希ガスや鉄・スズ・タングステンやビスマスなど選択することが可能であり、核融合プラズマで問題となっている炉材料の元素や、基礎データの不足している元素の多価イオンデータを取得することが目的の一つである。 今年度は核融合プラズマで問題になっているタングステン多価イオンに注目し、広範囲の波長領域で発光線の価数同定を行い、しかも電子遷移の同定にも成功した。我々の所有する多価イオン源(EBIT)は、電子エネルギーを制御することにより生成される多価イオンの価数を既定することができる。電子エネルギーを変化させ多価イオンの発光スペクトルを観測すると発光線に変化が現れる。その変化がタングステンの価数に対応しており、複雑な発光スペクトルでも価数を同定することが可能である。このタングステン多価イオンのスペクトルを低エネルギーから高エネルギーまで重ね合わせることにより核融合プラズマから放出されるタングステン多価イオンの発光スペクトルをある程度再現することが可能となった。我々は核融合研究所の高温プラズマ実験装置LHDにおいて、タングステンペレットを入射し、そのときの不純物タングステン多価イオンの発光スペクトルを測定した。そのスペクトルとEIBTで測定されたスペクトルを比較することで発光線の正確な同定に成功した。これらの成果は2012年ドイツHeidelbergで行われたIAEA Technical Meetingにおいて招待講演で報告し、また福岡で行われた第29回プラズマ核融合学会年会においても招待講演で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、多価イオン源EBITの電子エネルギーを連続的ではないが変化させ、それぞれの発光線スペクトルを重ね合わせることで、核融合プラズマからの多価イオンの発光スペクトルを模擬することに成功し、実際のLHDからのスペクトルを再現した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在核融合分野において、次期核融合炉の炉材であるタングステンが有力な候補となっているが、そのタングステンの多価イオンスペクトルは、プラズマ診断において非常に重要であるにもかかわらず、発光ラインの同定さえ未だ確立されておらず、その整備が世界的に急務となっている。このような状況下で、我々はタングステン多価イオンの研究が急務と判断し、平成25年度においても継続的にタングステン多価イオンのプラズマ模擬実験を行う計画である。また核融合研究分野以外においても多価イオンは注目されており、特にシングルショットで細胞を測定できる水の窓軟X線光源を用いた顕微鏡開発分野においては、高Z物質の多価イオンプラズマからの波長2.3~4.4nmのUTA(unresolved transition array)放射を用いる方法が提案されており、現在研究が進められている。ところが水の窓軟X線スペクトル領域を対象とする高Z物質の価数分離スペクトルのデータベースが不足しているのが現状であり,光源開発も効率的に行うことができない。我々はこの困難を克服するため、核融合科学研究所のCompact EBITおよび電気通信大学のTokyo-EBITを有機的に使い分けて,データベースを構築することを今年度行う計画である。EUV~水の窓軟X線光源を実験室光源に適用するために,この2~7 nm領域に発光を有する可能性のある様々な元素(P, Zr, Mo, W, Au, Pb, Bi)をCoBIT及びTokyo-EBITに導入し価数分離スペクトルを観測する。また、電子ビームを挿引し、水の窓軟X線光源を模擬した電子分布を再現しプラズマ光源からの発光スペクトルの模擬を行い、水の窓軟X線光源を用いた顕微鏡開発の重要なデータを提供する。
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