2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22350005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 岳彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90242099)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子構造 / 白金クラスター / 金ナノ粒子 / EXAFS / TEM / TAP |
Research Abstract |
(1)電子構造の解明と光励起・電子状態励起条件下での電子構造ダイナミクス レニウム酸化物クラスター、白金-レニウム合金クラスター、白金クラスターについて、構造と電子状態の検討を密度汎関数法計算により行い、安定であり、かつ化学反応性の高い状態を系統的に調べた。 (2)励起状態の反応条件の組み込み 光励起反応を行うためのセットアップを行った。また、低周波プラズマによる反応装置、およびRFプラズマによる反応装置の立ち上げを行った。低周波プラズマによるセルロースとリグニンからの合成ガス発生についての研究を行い、励起状態が、セルロースやリグニンの化学結合切断に有利で、有効に水素と一酸化炭素が発生することを見出した。 (3)物質開発の推進とキャラクタリゼーション 酸化セリウムの触媒作用により、二酸化炭素とオルトフェニレンジアミンから2-ヒドロキシベンゾイミダゾールの生成を見出した。また、酸化セリウム上に金微粒子を成長させた系、及び、ナノ粒子上のMgO上に金微粒子を成長させた系に関しては、ニトロベンゼン誘導体の水素化活性が優れているが、これらについての、TEM測定とEXAFS測定を行うことで、金微粒子の存在状態を明らかにした。Cr2O3上に生成したCuO種は、シクロヘキサンを酸化して生成物としては高いシクロヘキサノン選択性を示すが、この系についてCu-K端EXAFS測定と解析を行い、Cr2O3微結晶上に、CuOナノ結晶として分散していることを明らかにした。また、ハイドロタルサイト中に白金を高分散させた系はグリセロールから1,2-プロパンジオールに変換させることが可能であるが、Pt-LIII端EXAFSを測定して、酸素原子に覆われたPtナノ結晶の存在状態(結合状態)を明らかにした。また水素化脱硫に活性な硫化モリブデン-コバルト触媒のEXAFS解析とXPS解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々なナノ粒子、ホロー型ナノ粒子、酸化物ー金属複合系に関して、電子状態・構造・反応の計算を行い、これらの結果から、安定に存在できて、かつ反応性に富むナノマテリアルの要件を次第に明らかにしている。さらに、実際の触媒活性を持つ系に関してのTEM、EXAFSキャラクタリゼーションを行うことで、特にナノマテリアルの存在状態の実験的検証も積み重ねている。これらの知見は、本課題の中心的テーマである、物質設計と反応開発を行う上での貴重な知見である。 また、励起状態を反応に利用する点についても、特にプラズマを利用する系について、バイオマスマテリアルであるセルロースやリグニンについて、示すことができている。また、TAP装置を利用した反応キネティクスの測定についても順調に進めることができている。 触媒反応の開発という点では、オルトフェニレンジアミンと二酸化炭素の反応による2-ヒドロキシベンゾイミダゾールの生成という新しい反応を見出すことができていて、現在は、副生成物の除去の条件を確立している最中であり、これが完成すれば、生理活性物質である2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、および誘導体の新しい合成ルートになるとともに、二酸化炭素の固定化法としても有望な方法となる。 以上の観点により、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
残り1年間で、本研究課題を推進するために、下記の点を実施予定である。 (1)酸化セリウムは、二酸化炭素の固定化反応に活性であり、重要性が高い。酸化セリウムのホロー粒子を合成しより優れた反応性の発現を目指す。酸化セリウムナノ粒子のサイズ制御のために、電気泳動法の利用を確立する。また、光電子分光法による測定、密度汎関数法計算による計算化学的手法により、二酸化炭素の固定化反応に優れている酸化セリウムの反応性の起源と反応機構を解明する。 (2)光励起反応により、酸化セリウムの反応が進行することを目的として、CdSとのコアシェル構造型ナノ粒子の合成を検討する。TAP装置の固体触媒充填部を光励起対応可能にして、光励起キネティクスの測定を可能にし、TAP装置で検証する。 (3)新たなタイプのナノ粒子の設計、生成ルートの確立を目指すために、ポリペプチドの設計を行う。ポリペプチド中のシステインやヒスチジン残基は金属ナノ粒子への配位サイトになる。従来は、複数の分子がナノ粒子に配位するというタイプのナノ粒子合成が行われてきたが、そのため、構造制御、サイズ制御に限界があった。ポリペプチドを設計、合成することで、ユニークな構造を示す金属ナノ粒子の合成を目指す。これを触媒として用いた場合には、人工酵素モデルとして利用できる可能性がある。 (4)グリセロールやセルロースなどのバイオマス関連分子の変換は、低炭素社会の実現の観点から、社会的要請が高い。これを量子化学計算(Gasussian09とGRRMの併用)によって、適切な錯体触媒の探索を行うとともに、実験による検証を行う。 (5)プラズマ利用によるバイオマス関連物質の変換について、結果が得られてきているので、高効率化も含めて推進していく。
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Research Products
(7 results)