2011 Fiscal Year Annual Research Report
窒素内包フラーレンによる新しいESR・化学交換飽和移動分光法
Project/Area Number |
22350011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 立久 京都大学, 高等教育研究開発推進機構, 教授 (80175702)
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Keywords | N@C_<60> / γ-シクロデキストリン / ESRスペクトル / 包摂錯体 / 単結晶X-線構造解析 |
Research Abstract |
容易にESR吸収飽和現象を起こすN@C_<60>を用いて化学交換飽和移動法(ESR-CEST法)を実現すべく、平成22年度に得られたN@C_<60>・γ-シクロデキストリン包摂錯体の合成・精製の最適な手順や条件を用いて新たにN@C_<60>・γ-シクロデキストリン包摂錯体を合成し、より高濃度の水溶液を得ることに成功した。高濃度水溶液を得ることが出来たため、以下にまとめるような研究成果があがった。(1)室温水溶液状態での高いS/N比をもつESRスペクトルを得ることができた。(2)凍結水溶液状態でのESRスペクトル線形から内包する窒素原子の3個のラジカル電子に由来するスピン四重項状態に特徴的な分裂構造(微細構造FS)を確認した。これによりN@C_<60>中の窒素原子は、等方的な環境から包摂錯体形成による対称性低下やホスト・ゲスト間相互作用を感じていることが解った。(3)凍結水溶液状態でのESRスペクトル線形が温度変化することを確認した。この結果から、内包されるN@C50の分子内回転に由来する電子スピン副準位に依存する緩和過程が存在することが解った。(4)凍結水溶液状態でのパルスESR測定から、電子スピン副準位の緩和時間T-1(縦緩和時間)とT_2(横緩和時間)をそれぞれ決定できた。(5)N@C_<60>・γ-シクロデキストリン包摂錯体の単結晶X-線構造解析に成功した。その結果、結晶水の存在が確認され包摂錯体構造を保持する役目を果たしていることが解った。 新たなN@C_<60>50・γ-シクロデキストリン包摂錯体を合成で得た高濃度の水溶液を用いて、ESR測定、NMR測定、単結晶X-線構造解析の研究成果をとおして、包摂錯体の分子構造の詳細が判明したばかりでなく、包摂錯体内での分子内動力学に関する情報まで得ることが出来るようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度に得られたN@C_<60>・γ-シクロデキストリン包摂錯体の合成・精製の最適な手順や条件を用いて新たに合成した包摂錯体で、ESR測定、NMR測定、単結晶X-線構造解析が大きく進展した。特に今回得られたN@C_<60>・γ-シクロデキストリン包摂錯体の単結晶X-線構造解析は世界で初めての成功である。その結果、包摂錯体の分子構造の詳細と分子内動力学に関する情報まで得ることが出来るようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに得られた高濃度の水溶液を用いて、包摂錯体内の分子内動力学に由来する電子スピン緩和過程を詳しく解析することを努力する。
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Research Products
(7 results)