2011 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素トリアニオン種を用いた三重結合化合物の合成とその高分子化への展開
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22350015
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80291293)
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Keywords | トリアニオン等価体 / トリテルロシラン / ジリチオシラン / トリシリルゲルマン / リチオゲルマン / クロロスタンニレン |
Research Abstract |
本研究では、概念的に新しい化学種である高周期14族元素トリアニオン等価体を開発し、これを用いてこれまでにほとんど研究例のない高周期14族元素三重結合化合物を系統的に合成し、その特異な構造や物性を明らかにすることを目的とした。 当研究室は既にかさ高いm-テルフェニル型置換基である2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェニル基(以下アリール基と略す)を有するアリールトリス(ジメチルシリル)スタンナンを合成し、そのトランスメタル化反応によってトリアニオン等価体であるトリリチオスタンナンの発生に成功している。今回、トリリチオシランの発生を目指し、まず、その前駆体として、ケイ素上にアリール基と三つのトリブチルテルロ基を有する新規なトリテルロシランを合成した。続いて、このアリールトリス(トリブチルテルロ)シランに過剰量のメチルリチウムを作用させ、その反応溶液をヨウ化メチル等の求電子試剤で処理したところ、ジリチオシランに由来する捕捉生成物を確認することができたが、トリリチオシランに由来する捕捉生成物を確認するには至らなかった。従って、アリールトリス(トリブチルテルロ)シランとメチルリチウムの反応では、ジリチオシランまでは発生するものの、トリリチオシランは発生しないことがわかった。ゲルマニウムのトリアニオン等価体を目指した研究も並行して行った。ゲルマニウム上にアリール基と三つのジメチルシリル基を有するアリールトリス(ジメチルシリル)ゲルマンを新規に合成し、これとメチルリチウムの反応を検討したところ、リチオ化は一段階で止まり、リチオゲルマンの単離に成功した。この分子構造をX線構造解析により明らかにした。異核三重結合化合物の合成を目指し、このリチオゲルマンとアリールトリクロロスタンナンとの反応を検討したところ、ゲルマニウム-スズ結合は形成されず、予想外のアリールクロロスタンニレンが生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目指す高周期14族元素トリアニオン等価体を発生させるまでには至っていないが、様々な前駆体を合成し、そのトランスメタル化の詳細をきちんとつきとめている。また、研究の過程で予想外の反応を見つけており、研究を広範囲に展開することが可能になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
アリールトリス(トリブチルテルロ)シランに対しては、ヨウ化リチウムなどの新たなトランスメタル化反応を検討し、トリリチオシランの発生を目指す。単離に成功したリチオゲルマンを用いて予想外の反応が見つかったので、この性質を生かした新しい化学種の創製を目指す。高周期14族元素トリアニオン等価体の単離が困難な場合には、反応系中で発生させたものを用いて次の反応を行うなどのワンポット反応も検討する。
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Research Products
(9 results)