2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子修飾型開殻グラフェンの精密合成と物性開発
Project/Area Number |
22350018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 靖 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70230133)
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Keywords | 開殻有機分子 / ヘテロ原子 / 置換基効果 |
Research Abstract |
本申請研究では、開殻グラフェンの部分骨格であるトリアンギュレンに三つの酸素官能基を導入したトリオキソトリアンギュレン(TOT)を基盤とする新奇機能性物質の開拓を行う。TOTに様々な置換基を導入することでその電子的、構造的物性を制御し、有機中性ラジカルを用いた新しい機能を探索する。 今年度は、TOTのハロゲン置換体の合成に成功した。合成は市販の試薬から6段階で効果的に行うことができた。これらのラジカルは、過去に合成したtert-ブチル体に比べて置換基による立体保護の効果が激減しているにもかかわらず、いずれも室温空気中で扱えるほどの高い安定性を示した。このことは、立体保護がないと生成後速やかに分解してしまう他の中性ラジカルとは異なり、TOTが熱力学的、速度論的に高い安定性を持つことを示す特筆すべき結果である。これらハロゲン置換体の物性について調べた結果、ハロゲン原子の電子吸引効果によって酸化還元電位が高電位にシフトすること、置換基によって電子スピン構造が変調することが明らかになった。さらに、結晶中ではハロゲン原子を含む分子間相互作用によって分子配列が制御され、分光学的、磁気的性質に大きな変化が現れた。また、臭素置換体を合成中間体として用いた置換基変換についても検討を行い、遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応によってフェニル基やアルコキシ基の導入に成功した。これらについても酸化還元挙動や電子スピン構造、固体物性に顕著な置換基効果が現れた。
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Research Products
(23 results)