2011 Fiscal Year Annual Research Report
不飽和環状有機金属化合物の歪んだsp炭素の性質を利用する機能性分子の創製
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22350022
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 教之 上智大学, 理工学部, 准教授 (90241231)
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Keywords | クムレン / ジルコニウム / 環状アルキン / 環状アレン |
Research Abstract |
昨年度の研究においては、五員環アレン錯体の直接的な合成方法の開発と、生成した五員環アレンとカルボニル化合物との反応について明らかにした。本年度は、原料である1,3-エンインが、必ずしも安定な五員環構造をとらなくても同様の反応を実現できるのではないかと考え、η^2-配位形式をとる1,3-エンインとケトンとの反応を検討した。その結果中間体として五員環アレンを形成したと同様の反応生成物を与えることがわかった。しかしながら加水分解後のアルコールの構造はエンインの置換基に依存しており、今後は加水分解反応の検討が必要であることが示唆された。また、種々の[5]クムレン化合物を合成し、ジルコノセン錯体との反応を試みた。クムレンの末端置換基を5員環、6員環、7員環と変えて環状アルキン錯体を合成し、トリメチルホスフィンを加えた結果、置換基の嵩高さのわずかな違いが錯体のハプトトロピックな反応性に著しい差が表れることが明らかとなった。即ち、5,6員環では環状アルキンがより安定であるのに対し、7員環の場合のみ開環が起こりη^2-配位錯体を与えた。これらは鎖状配位子のハプトトロピックな挙動に関する新たな知見である。また、種々のアルキニルイミンを合成し、根岸試薬との反応を試み、五員環アレンの複素環化合物が生成することを分光学的に確認した。さらに、1,3-エンインとアルキン錯体の反応により、7員環アレン化合物の合成にも成功した。この分子は環中に単独の二重結合と、アレン部位を持つ高度に不飽和な構造を有する点で非常に興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歪んだsp炭素の性質を研究する本課題において、一つの目標であった含窒素五員環アレン誘導体の合成方法を確立することに成功した。一方でその分子構造が明らかになっておらず、今後の課題である。反応性の探究という点においては、必ずしも安定な5員環アレンを経由しなくても前駆体から同様の反応を実現できることが分かったことは、今後の検討において大きな助けとなろう。[5]クムレンを出発とする共役型五員環アルキン化合物に関しては、そのハプトトロピックな反応性について新たな知見を得ることができた。さらに、含窒素ヘテロ5員環アレンを根岸試薬から簡便に得る方法を確立できたので、カルベンタイプの歪んだアレンへ一歩近づいたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1,3-エンインから得られる5員環アレンについて、その分子構造を明らかにすることが是非とも必要である。そのために種々の置換基を試すなどして良好な単結晶を得る努力を払う。一方で様々な基質との反応性を検討するために、主にトランスメタル化反応について調査する必要がある。[5]クムレンの化合物群については、嵩高い置換基を有する化合物のみについて有用な知見が得られているが、置換基の立体環境について錯体側の置換基を変更することによってもハプトトロピックな反応を実現したい。アルキニルイミンタイプの化合物を原料とするヘテロ環アレンについては後周期遷移金属類との反応を試みる必要があり、広範囲な化合物の中で適切な試剤の選択が求められる。
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