2012 Fiscal Year Annual Research Report
不飽和環状有機金属化合物の歪んだsp炭素の性質を利用する機能性分子の創製
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22350022
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 教之 上智大学, 理工学部, 准教授 (90241231)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環状アレン / 環状アルキン / 有機金属化合物 / ジルコニウム / エンイン / アルキニルイミン |
Research Abstract |
昨年度までの研究においては、五員環アレン錯体の直接的な合成方法の開発と、生成した五員環アレンとカルボニル化合物との反応について明らかにした。また、含窒素型五員環アレン化合物の合成を達成した。本年度は、含窒素型五員環アレン化合物と種々有機分子との炭素―炭素結合生成反応について検討したほか、曲がったsp炭素原子の遷移金属への配位について検討を行った。その結果、銅塩の存在下、脱離基を有するアリル化合物との反応においてアリル基が二つ反応した生成物が得られることがわかった。この反応についてはやや再現性に乏しいため、共存する金属塩の効果など詳細な反応条件を検討中である。遷移金属錯体との反応においては、二核金属錯体が得られた。形式上アレンのsp炭素が二つ目の金属に配位したともいえる構造を示した。6つの軽原子と2つの金属が形成する枠組みはこれまでほとんど知られておらず、ジエン錯体が縮合した形の構造が興味深い。その配位様式はまだ明らかではないが、カルベン型の配位をしているとも考えられる。また、種々の[5]クムレン化合物のうちクムレンの末端置換基に7員環シクロへプチル基を有する分子についてそのジルコニウム錯体を合成し反応性を検討したところ、イソニトリルとの反応においても錯体のハプトトロピックな反応性に起因する、二分子のイソニトリルが挿入した化合物が得られることが明らかとなった。さらに、1,3-エンインとアルキン錯体の反応により、7員環アレン化合物の合成に成功した。この分子の合成と構造の詳細な検討において、分子は環中に単独の二重結合と、アレン部位を持つ高度に不飽和な構造を有することが構造解析から確かめられた。また、アルキンとエンインが金属上で交差カップリングして形成するこの反応において、不安定なアルキンとして知られるベンザインも適用できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歪んだsp炭素の性質を研究する本課題において、一昨年度までに、一つの目標であった含窒素五員環アレン誘導体の合成方法を確立することに成功した。昨年度は、この化合物の種々の類縁体を合成し、この一つが今ひとつの遷移金属に確かに配位できることを見出した。その配位様式は、配位子としてよく知られるヘテロサイクリックカルベンとは異なる様式である可能性を否めないが、形式上アレンの四級炭素が遷移金属に配位した形で二核錯体を形成しており、その分子構造を明らかにできたことは、今後の検討において大きな助けとなろう。[5]クムレンを出発とする共役型五員環アルキン化合物に関しては、そのハプトトロピックな反応性に基づくイソニトリルの挿入を確認できた。これは直接に環状アルキンのビラジカル性を示唆するものではないが、五員環アルキン化合物の安定性と反応性に関する重要な情報を与えると言える。さらに、金属上でのアルキンと1,3-エンインの交差カップリングより生成する一連の7員環アレン化合物を合成し、それらの構造を詳細に検討したところ、金属とアレン部位の相互作用の強さにおいて含窒素ヘテロ7員環アレンと異なることがわかった。5員環アレンにおいては、4炭素分子と3炭素1窒素分子に顕著な相違が見られなかったことと比較すると興味深い。これらの知見は曲がった環状アレン、環状アルキンの反応性について多くの情報を与えたといえる。以上の点から、本課題はまだ残された問題があるとは言えおおむね順調に進展していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
1,3-エンインから得られる5員環アレンについて、その分子構造を明らかにすることはまだ成功しておらず是非とも必要である。そのために種々の置換基を試すなどして良好な単結晶を得る努力を引き続き払う。ことに、一般に結晶性に優れるとされるフェニル基、t-ブチル基などを原料となるアルキニルイミンに導入し、その有機金属化合物について検討する。またその反応性については共存金属塩の影響があることがわかりつつあり、様々な基質と塩の反応性を検討する。おそらくは金属交換反応における反応性のちがいが現れていると推測しているが、あるいは銅塩などの場合、金属交換後の化学種がさらに変換した種が反応に関与している可能性もあり、それらを明らかにする。アルキニルイミンタイプの化合物を原料とするヘテロ環アレンについては後周期遷移金属錯体との反応を試み、異種複核錯体の合成を目指す。そのさい異種金属原子の交換が起こりうるが、複素原子との親和性に依存して二金属に選択性が出ることが期待される。また、窒素以外の複素原子を含む化合物の合成も次なる目標の一つである。さらに、窒素を含まない炭素のみの五員環アレンにおいても金属への配位が可能かどうか、二核錯体の可能性を検討する。また、アレン部位の歪みの大きさが直接カルベン性に寄与するのか、あるいは金属部位との相互作用がそれを大きく左右するのか、という興味に関連して、五員環アレンより歪みの小さい七員環アレン化合物がはたしてカルベン性を有するか否かも興味深い課題である。
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[Journal Article] Facile Formation of Five-membered N-heterocyclic Zirconacycloallenoids2012
Author(s)
S. K. Podiyanachari, R. Froehlich, C. G. Daniliuc, J. L. Petersen, G. Kehr, Gerhard Erker, Noriyuki Suzuki, S. Yuasa, K. Hagimori, S. Inoue, T. Asada, T. Takemoto, Y. Masuyama
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Journal Title
Dalton. Trans.
Volume: 41
Pages: 10811-10816
DOI
Peer Reviewed
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