2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオンの動的特性を活かした機能性自己集合系の構築
Project/Area Number |
22350025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平岡 秀一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10322538)
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Keywords | 分子運動素子 / 自己集合 / 多核錯体 / 分子カプセル |
Research Abstract |
前年度までに3つの3-ピリジル基を有するディスク状三座配位子とZn(II),Hg(I)イオンから形成される6核八面体型カプセル錯体に対し,様々なスルホナート配位子を導入すると,内部に位置する6つのトリフラートと交換し,カプセル内部を事後修飾できることが明らかとなった.今年度は,カプセル内部に金属イオンの配位部位を構築し,特異な金属錯体や化学反応場の構築を目指し,トリフェニルホスフィンモノスルホン酸アニオンを配位子としてカプセル内部の修飾化を試みた.トリフェニルホスフィンモノスルホナート用いたAN(II)カプセルへ加えると,選択的に2つのアニオンがカプセル内部のトリフラートと交換することが明らかとなった.一方,Hg(II)カプセルではリン原子をHg(II)イオン間における相互作用が強く,カプセル錯体が崩壊することが明らかとなった.2つのスルホナートが交換するカプセル錯体は2種類の構造の可能性があるが,1H,19F,31PNMR測定の解析の結果,2つのスルホナート配位子は隣接する2つのZn(II)イオン上に位置するC2v対称性を示すことが明らかとなった.カプセル錯体の結晶構造をもとにモデリングを行ったところ,2つのスルホナート配位子が近接すると立体的に不利になると考えられるが,この構造体が熱力学的に安定な種として選択的に形成したことから,2つのスルホナートの芳香環同士の相互作用等により安定化が働いていると推察される.さらに,この構造体内部には化学的に非等価な2種類のトリフラーとが存在するが,これらの存在を19FNMR測定から確認できた.そこで,これら2種類のトリフラートの対するさらなる配位子交換による選択性を確認するために,トシラートアニオンによる交換を行った結果,1種類のトリフラートが選択的にトシラートと交換することが明らかとなった.さらに,この2種のスルホナート配位子と交換した構造体について1H,19FNMR測定の結果,トシラート配位子がフェニルホスフィンモノスルホナートに近接するサイトに位置していることも明らかとなった,
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階において,トリフェニルホスフィンスルホナートを選択的に導入できるか,導入数やその位置選択性については,分子モデルでは明確では無かった.しかしながら、実際に研究を進める中で,このモノスルホナートが極めて高い選択性を示し,カプセル内部を修飾できることが明らかとなった点は計画以上とも言えるが,構築されたカプセル錯体に対する,金属イオンの集積化や新規錯体形成等の研究について次年度に詳細に検討することとなり,おおむね計画通りであると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに明らかとなった特異なカプセル錯体を利用し,内部に金属イオンを土導入する試みや,特異環境におかれたリン原子を利用した反応化学を進める予定である.特に,カプセル内部に導入された2つのリン原子は近接しているものの,一つの金属イオンに適切に配位できる空間配置に無いことが分子モデリングから推測され,このことから,カプセル内部に導入された金属イオンは高い反応性を示すと期待される.さらに,カプセル内部の空間により高立体選択性の発現も期待される.
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