2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子素子開発に向けた拡張π共役系多核金属錯体に関する研究
Project/Area Number |
22350026
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
穐田 宗隆 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (50167839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 隆司 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (30451991)
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Keywords | 分子ワイヤー / アセチレン / ポルフィリン / 有機金属化合物 / π共役 |
Research Abstract |
本研究は、複数の金属錯体とπ共役分子の多次元的な連結により、前例のない『拡張π共役-金属錯体』を構築すると共に、その高次集積化を達成することで、電子伝達能を基盤とする独創的な機能性分子素子の開発を目指すものである。具体的には、拡張π共役金属錯体の多次元化・集積化によって機能性分子素子を創出する。具体的には、(1)拡張π共役系二次元分子ワイヤーおよび(2)三次元分子ネットワークを構築する。また、分子素子の機能化を目指して、(3)環境応答型スイッチングシステムを開発する。更に、(4)集積型の拡張π共役金属錯体を創製する。 上記の目的に対して平成22年度は、金属フラグメントと共役架橋配位子が交互に配列した長鎖分子ワイヤーを分子設計し、その合成法として、一ユニットずつ伸長する方法と二官能性出発原料に対して両側に伸長していく方法の二種類を開発した。これらの方法を組み合わせることにより、最大5核錯体、最長50Åに及ぶ長鎖分子ワイヤーの合成に成功した。その分子ワイヤー性能評価に関しては予備的な電気化学的測定を行った結果、同程度の長さの有機金属分子ワイヤーとは雲泥の差を示す優れた性能を示すことが明らかになった。 一方ポルフィリン錯体については、ポルフィリン骨格の両末端にアセチレンリンカーを介して酸化還元活性な鉄あるいはルテニウムフラグメントを結合させた錯体を合成し、電気化学的および分光化学的にその分子ワイヤー評価を行った。その結果、エチレンやベンゼンなどの単純な有機骨格を中心に含む錯体と比べて100倍以上ワイヤー性能が向上し、ポルフィリンがすぐれた多次元リンカーとなることを明らかにした。また、ワイヤー性能は強い中心金属依存性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポルフィリンを中心に据えた錯体は、合成の困難さはあったものの計画通り合成に成功し、物性に関しては、長鎖故の低性能化が危ぶまれたが、予想以上の性能を発現し、分子ワイヤーの高性能ジャンクションとして機能できることを世界に先駆けて明らかにした。 超分子法や酸化カップリング法を駆使して多様な構造体へのアクセスが可能になったので、次年度以降の発展がさらに一層期待される状況になってきた
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Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる平成24年度は、これまで2年間でえられた成果の体系化を図る。ポルフィリン錯体に関しては、中心金属が異なったものを系統的に合成して、その効果を明らかにするとともに、二核錯体から四核錯体に展開して一次元構造から二次元構造に展開し、一方向だけではなく多方向への情報伝達機能を開発し、ポルフィリン機能との複合化を図って、機能性分子ジャンクションへと展開する。 超分子相互作用については、これを中心に据えた分子デバイスを設計・合成して、まずは、これまでにない相互作用を介したワイヤー性能の発現をはかる。 長鎖化に関しては、ワイヤー部分の構造をさまざまなヘテロ環に展開し、また別途合成法も開発して、構造の多様化を図り、得られた錯体の機能評価を行う。
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