2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22350029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉村 一良 京都大学, 理学研究科, 教授 (70191640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道岡 千城 京都大学, 理学研究科, 助教 (70378595)
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Keywords | 二次元電子系 / 遍歴磁性 / 超伝導 / スピンフラストレーション |
Research Abstract |
本研究は新規二次元電子系化合物の物質探索と物性研究を目的としている。本年度のもっとも大きな成果はACo2P2において遍歴メタ磁性転移を発見したことである。以下に詳しく述べる。ACo2P2はThCr2Si2型構造(I4/mmm)を有する化合物であり、辺共有したCo2P2四面体層とAサイト層が交互に積層した構造である。この構造は高い超伝導転移温度を示す鉄砒素系と同じ構造であり興味深い。またAサイトに入る原子によって種々の磁性を示すことが報告されている。A=La(ucT構造)では強磁性体、A=Ca,Ce(cT構造)などはA型反強磁性体であり、いずれも秩序層ではCo2P2面内で磁気モーメントが強磁性的に揃っている。本研究ではA=Srにおいて磁化率が高温でCurie-Weiss則に従い、低温では極大を示すという遍歴電子強磁性量子臨界点近傍の挙動を見出した。また強磁場磁化過程においていくつかの物質において遍歴電子メタ磁性を観測した。この転移磁場は磁化率の極大の温度に相関し、その特徴的な温度が高いほど大きい磁場においてメタ磁性転移が現れた。この結果はこの物質系が強磁性量子臨界点近傍にあることを意味していて、一方は超伝導を示す鉄系と対比して考えても興味深い結果である。また新規鉄系高温超伝導体のうち,カルコゲナイド系,FeTel-xSexに着目し、NMRを用いてその磁気的性質を明らかにした。x=0,0.05,0-32の試料におけるNMRのT1Tは二次元反強磁性スピン揺らぎのSCR理論の予言するキュリーワイス的な温度変化を示した。このときのワイス温度が0となるところが反強磁性量子臨界点に対応していて、それがx=0.02付近と非常に小さいことが明らかになった。また低温におけるNMR研究から、本系の超伝導が、従来型のものではなく、磁気揺らぎに起因していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、二次元電子系の特に強磁性揺らぎを内在する化合物をいくつか見出し、その物性を明らかにすることに成功している。これらの結果には最近盛んに研究されている鉄系と比較することにより、その超伝導に対して新たな知見を与えることが出来る。また遍歴電子強磁性のスピン揺らぎの理論は現在でも発展を続けていて、それら新しい理論に対する比較検討としても意味がある。これらの理由から本研究は順調に行われていると結論できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究が順調に進められていることから、今年度以降はさらにその発展を目指す。特に二次元電子面をもつもののうち、強磁性相互作用を有している物質に着目し、そのスピン揺らぎについて明らかにする予定である。
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