2011 Fiscal Year Annual Research Report
異相間電荷移動に駆動された電位振動の空間伝播・同期現象の計測と機構解明
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22350033
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 耕治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00229303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 裕美 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40314306)
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Keywords | 膜電位振動 / 人工液膜系 / 振動の同期 / 電気信号の伝播 / 電荷移動の共役 / 自律性 |
Research Abstract |
昨年度までの研究においては、神経細胞や心筋細胞における、膜電位の伝播や同期に及ぼすバルク伝導や界面反応の関与を明らかにするために、人工液膜系を用いて複数の電位振動間の伝播や同期を実現した。水相(W1)、有機相(O)、水相(W2)からなる3相液膜系を2つ連結して、2つの膜電位振動系の間の距離と同期の成否の関係を詳細に調査した。2つの液膜系が一定の距離より近いとき、両者は同期することが分かった。同期した電位パルス間の時間差を10msのサンプリング時間で計測したところ、一方の電位パルスから他方の電位パルスへ約100msの時間差で伝播していることがわかった。さらに、詳細な検討より、2つの液膜電位振動系の伝播と同期現象に、バルク伝導と界面伝導の両方が関与していることが分かった。 今年度は、第1に、同期した2つのパルスの自律性に注目した。先行パルスが自律的に振動しているのが自明であるのに対して、伝播により生じた後発パルスが自律的か否かは不明であった。周期の異なる2つの振動系の相関を調べた結果、外見上同期しているパルスであっても、周期の差が大きいと自律性を失っていることが分かった。この結果は、伝播による同期現象に本質的差異が存在することを示唆した。第2に、また、直線上にある3つの液膜系での伝播を調査し、振動の自律性と振幅の減衰の関係について調査した。3つの液膜系において振動系と非振動系を組み合わせた結果、振動系は電位パルスの伝播を抑制する方向に、非振動系は伝播を促進する方向に働くことが分った。これは、神経伝達において不活性部位とされる髄鞘が電位パルスの伝達を速めることと深く関係していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同期パルスの自律性と振動周期の関係について定量的関係が得られた。3つ以上の液膜系の実験において、神経伝達における髄鞘の役割を再現する実験結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた成果を発展させるとともに、新たな実験系に展開する。すなわち、液膜振動系の数が3つまたはそれ以上が同期するときの伝播機構について、多様な幾何配置を比較し、とくに伝播のパターンと伝播速度の関係について調べる。また、心臓細胞のように1パルスが多細胞に伝播する様式の優位性が示されるモデル化および単一細胞中の複数のチャンネル膜タンパクのモデル化を行う。
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Research Products
(12 results)