2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子の集積体表面を利用した新規な大気圧レーザー脱離ソフトイオン化法の開発
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22350040
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
荒川 隆一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00127177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 英也 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50322285)
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Keywords | 表面支援レーザー脱離イオン化法 / 大気圧MALDI-MS / 表面プラズモン共鳴センシング / 大気圧SALDI-MS / PFOA / LSPR |
Research Abstract |
本研究の目的は、環境中の低分子量の汚染物質、医薬品、食品・工業材料の添加剤を簡便にハイスループット質量分析(MS)するための新しい「大気圧」表面支援レーザー脱離イオン化法(AP-SALDI)を開発することである。(1)金ナノ粒子積層薄膜を熱処理することにより、金ナノ粒子が集合した新しい金ナノ構造体基板を開発した。この金ナノ構造体基板を表面プラズモン共鳴センシング(LSPR)に用いたところ、10^<-12>Mの極微量の溶液中のリゾチームを高感度検出できることがわかった。LSPRで検出した試料は、そのままCHCAマトリックスを用いたMALDI-MSによって同定することが可能であった。一方、従来の金ナノ粒子を担持した基板では、この極微量のリゾチームは検出できなかった。金ナノ構造体基板は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)のための試料基板としても利用できることから、LSPRとMALDI-MSを連携させた新しい分析用基板としての展開が期待される。(2)AP-SALDI用のイオン源装置を製作し、イオントラップ型質量分析計に接続した。残留性有機汚染物質であるperfluorooctanoicacid(PFOA)とタンパク質シトクロムcを用いて、AP-MALDIとしてのイオン化特性を評価した。 一般にMALDIではPFOAのイオンは検出できない。しかし、AP-MALDIでは分子負イオン[M-H]^-が強い強度で検出できた。さらにシトクロムCの多価イオンマススペクトルが得られた。これらの結果から、「大気圧」MALDIまたはSALDIは「真空中」のそれらに較べてよりソフトなイオン化であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「大気圧」表面支援レーザー脱離イオン化法で利用するためのナノ粒子機材の開発は順調に進展している。また、「大気圧」でのレーザー脱離イオン化装置の製作が完了し、各種構造体基板を用いて、環境汚染物質の質量分析に適用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
磁性ナノ粒子(Fe_3O_4)と試料との相互作用を利用して,標的試料のみを河川中から捕捉・分離し、抽出操作をしないでレーザー脱離イオン化質量分析で直接検出・同定できるアフィニティSALDI-MSを試みる。Fe_3O_4を用いる理由は、磁場をかけることで簡単かつ確実に標的試料の捕捉・分離が行えること、また、Fe_3O_4はシランカップリング剤により,様々な官能基を表面に修飾することが可能である点である。本年度に開発した大気圧SALDI用イオン源を結合した質量分析装置を利用して、磁性ナノ構造体の大気圧レーザー脱離イオン化能の評価を行う。
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