2011 Fiscal Year Annual Research Report
酵素機能を凌駕した人工脱水縮合反応の設計と薬理活性有機分子構築への応用
Project/Area Number |
22350044
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
椎名 勇 東京理科大学, 理学部, 教授 (40246690)
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Keywords | 有機化学 / 有機合成化学 / 脱水縮合 / 不斉合成 / 不斉エステル化 / 速度論的光学分割 / 光学活性カルボン酸 |
Research Abstract |
我々の研究室で開発した高効率脱水縮合反応はエステル、ラクトン、アミドならびにペプチド類を容易に与える実用性の高い手段として認知されるに至っている。本手法で用いる触媒をキラル分子とすることで不斉合成への展開が図れ、これまで酵素反応でも実現の難しかったラセミカルボン酸の速度論的光学分割、ならびに酵素反応の独壇場であったラセミアルコールの速度論的光学分割を人工的に行うことも可能になると考えられる。本申請研究においては下記3項目に焦点を当てて研究を遂行する。(i)選択的にカルボン酸と反応する脱水縮合剤の適切な構造を探索する。(ii)高エナンチオ選択性を与える触媒構造の精査を行う。(iii)化学選択性ならびに立体選択性の発現に求められるアキラルな求核剤ならびに求電子剤の構造最適化を行う。 前年度、ラセミアルコールおよびラセミカルボン酸のそれぞれの不斉分割のパラメーターの最適化を図る予定であったが、前者の反応において非常に高い一般性が示されたことから基質適用性が大きく広がることになったので、平成23年度は改めてラセミカルボン酸の速度論的光学分割における反応条件の最適化、用いる基質および試剤の構造精査を行った。その結果、(i)用いる縮合剤をPMBA(p-メトキシ安息香酸無水物)から脂肪酸無水物に変更したところ化学選択性の向上が達成された。(ii)触媒であるBTM(ベンゾテトラミソール)の構造を改変したところより高いエナンチオ選択性を与える新規触媒が発見された。(iii)ラセミカルボン酸の不斉分割に使用するアキラルアルコールの構造最適化を完了させた。すでに反応の遷移状態の解明も試み、エナンチオマー間の反応速度の差を密度汎関数法により決定できることを論文として報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(研究第2年目)はラセミカルボン酸の速度論敵光学分割法を見出すことができた。次年度はさらに展開を図り、アルキルアルケニルカルビノール構造を有するラセミアルコールならびにアルキルアルキニルカルビノール構造を有するラセミアルコールの速度論的光学分割の手段を探究する。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年目および第2年目の研究によって明らかとした最適な反応条件のもと、入手可能な種々のラセミアルコールの速度論的光学分割を試みる。特に、ラセミアルキルアルケニルカルビノールやラセミアルキルアルキニルカルビノールの速度論的光学分割の開発を検討したいと考えている。
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