2011 Fiscal Year Annual Research Report
キラルな環状π電子共役系の創製を指向した付加環化反応の新展開
Project/Area Number |
22350046
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 高範 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80265735)
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Keywords | 選択的合成・反応 / 有機金属触媒 / ファインケミカルズ / 不斉合成 / 有機電子材料・素子 |
Research Abstract |
ヘリセンは歪んだπ共役系分子であり、平面的なπ共役分子とは異なる物理的・光学的性質を示すことが期待されている。一方シロールは、σ*-π*共役によりLUMO準位が低いことから、光物理的・電子物理的に特異な性質を示すことが知られている。しかしシロールとヘリセンの両方の骨格を持つ化合物の合成例はない。そこで報告者は、当研究室で開発された[2+2+2]付加環化反応による不斉創製法を利用し、シロール環を含むヘリセンであるシラヘリセンをエナンチオ選択的に合成した。すなわちオルトフェニレン架橋の含ケイ素対称テトラインと、フェニレン架橋ジインを基質として用い、分子間、続く分子内[2+2+2]付加環化反応によるシラヘリセンの合成を検討した。種々検討をした結果、中性イリジウム錯体およびフェロセン骨格を有するキラル二座リン配位子から調製した触媒を用いてキシレン溶媒中ジインを滴下して反応することで、軸不斉を有する付加環化体が高収率かつ極めて高い不斉収率で得られた。さらに、得られた軸不斉トリインの分子内[2+2+2]付加環化反応によるヘリセン合成を検討した。その結果、アキラルなNi錯体を用いることで、高収率かつほぼ完全な不斉転写率でらせん不斉を有するシラヘリセン化合物が得られた。 さらに、[2+2+2]付加環化反応を利用して、これまで報告例がない不斉骨格として、ビフェニレン部位の回転阻害により軸不斉を有するビスビフェニレニル化合物の合成を目指した。その結果、分子内に6つのアルキンを有するヘキサインを用い、カチオン性ロジウム触媒を作用させることでビスビフェニレニル骨格のエナンチオ選択的合成に成功した。また同様のヘキサインに中性イリジウム触媒を用いて反応を行うと、異なる形式の分子内反応が進行し、軸不斉を有する大環状化合物がエナンチオ選択的に合成できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、付加環化反応により合成した生成物の物性評価に至ることができた。さらに、その研究過程で見いだした予期せぬ結果を展開し、これまで合成例の少ない大環状化含物に複数のアルキン部分を有する不斉骨格の構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
より高機能な物性発現を目指すために、計算化学や物性化学を専門とする研究者との緊密な連携が必要である。
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Research Products
(8 results)