Research Abstract |
共役構造を有する合成らせん高分子は光電気機能材料,不斉認識材料,光学活性触媒などに応用が期待される。平成22年度には,様々な置換基を有する各種3,5-ジヨードヒドロキシフェニルグリシン誘導体を合成し,1,4-ジエチニルベンゼン等のジインモノマーとの薗頭カップリグ重合により,様々な新規ポリ(m-フェニレン)誘導体を合成した。NMR, IR, UV-vis, CDスペクトルにより,生成したポリマーは一方向巻優先のらせん構造,あるいは光学活性な会合構造を形成することを確認した。主鎖にアゾベンゼン構造を有するポリマーのアゾベンゼン部位は,紫外光照射によりトランス体からシス体に,可視光照射によりシス体からトランス体に可逆的に異性化した。それに伴い,CDスペクトルの強度が変化したことから,このポリマーは光応答性光学活性材料としての展開が期待される。また,3,5-ジョードヒドロキシフェニルグリシンからジインモノマーを合成し,ロジウム触媒を用いてジヒドロシランモノマーとのヒドロシリル化重合を検討した。両モノマーと触媒を同時に仕込むことにより主鎖二重結合部がE-体のポリマーが良好な収率で生成した。これに対して,あらかじめジヒドロシランモノマーと触媒を混合,熟成した後,ジインモノマーを仕込み,用いる触媒量をモノマーに対して1/50から1/500等量に減らすことにより,主鎖二重結合部が主にZ-体のポリマーを得ることに成功した。UV-visおよび蛍光スペクトル分析ならびに分子軌道法による解析により,E-ポリマーの主鎖共役長はZ-体ポリマーよりも長いことが確認された。さらに,上記ジインモノマーのパラジウムあるいは銅触媒による酸化カップリング重合により,新規光学活性ポリフェニレンエチニレンを合成した。このポリマーはDMF/水=1/1中で光学活性な会合構造を形成することが分かった。
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