2012 Fiscal Year Annual Research Report
らせん共役高分子を活用する分子「内部」光学活性場の構築と機能発現
Project/Area Number |
22350049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三田 文雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70262318)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 / 有機工業化学 / 合成化学 |
Research Abstract |
アミノ酸を不斉源とする種々のヒドロキシ基含有ポリフェニレンエチニレンアリレンエチニレンを新たに合成し,そのモノマー単位の共役長が二次構造の形成に及ぼす影響について検討した。数平均分子量3万程度ポリマーが定量的な収率で得られた。ポリマーは,CDスペクトルにおいて主鎖の吸収波長領域に明確なピークを示したことから,一方向巻きに偏ったらせん構造を形成していると考えられる。フェニレン,ビフェニレン,ターフェニレン基を有するポリマーはいずれも344 nm付近に吸収極大を示したのに対し,アリレン部分がナフチレン,ピレニレンのポリマーはそれぞれ365,390 nm に吸収極大を示した。ナフタレン,ピレン基の導入により共役が広がっていると考えられる。アリレン部分がフェニレンのモノマーおよびポリマーの溶液IRスペクトルをクロロホルム中希薄条件で測定した。モノマーのアミド結合に由来するカルボニル基の伸縮振動のピークに比べ,ポリマーの対応するピークは低波数側に観測された。ポリマーはアミド結合部位の分子内水素結合により安定化されたらせん構造を形成していると考えられる。フェニレン基にドデシル基を置換したポリマーは,412 nmに鋭い蛍光ピークを示したのに対し,他のポリマーは440-535 nm付近に青-緑-黄色の蛍光発光を示した。ドデシル基含有ポリマーは,trans-ジグザグ構造を,他のポリマーはらせん構造を形成していると推測される。これは長鎖アルキル基の影響により,非極性溶媒に対する溶解性が向上し,親水性・疎水性のバランスが崩れ,またアルキル鎖の立体反発の影響により,ポリマーが折り畳まれたらせん構造を安定な構造として形成できなくなったためと推測される。本研究により,ヒドロキシ基含有ポリフェニレンエチニレンの構造と光特性の関係が明らかとなり,共役高分子の研究分野における学術的な進展が達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までの研究で,ポリフェニレンエチニレンの置換基が高次構造ならびに共役長に及ぼす影響が明確になってきたことで,研究の目的である内部光学活性場の構築のための分子設計の指針が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られた知見を元に,内部光学活性場と各種ゲスト化合物との相互作用に関する研究を進める。具体的には,様々な置換基を有するD-およびL-アミノ酸誘導体の不斉認識,極性置換基を有するオリゴエチレングリコール,ポリエチレンイミンなどの高分子との相互作用を検討し,らせん折りたたみ構造を形成している状態と,トランスジグザグ構造を形成している状態における相互作用の差異を明らかにする。
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Research Products
(10 results)