2011 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性相互作用によって誘起される高分子水溶液の白濁現象の真相究明
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22350050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉崎 武尚 京都大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90230705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 洋 京都大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90243162)
井田 大地 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教 (80610518)
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Keywords | 高分子物性 / 高分子溶液物性 / ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド / 高分子水溶液 / 相挙動 / 曇点 / 吸熱挙動 |
Research Abstract |
ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPA)水溶液の昇温にともなう白濁現象の原因を明らかにするため,平成23年度は平成22年度およびそれ以前に調製した種々のPNIPA試料を用いて,水溶液曇点近傍における小角X線散乱測定と示差走査熱量計を用いた熱量測定を計画していたが,それぞれの成果は以下の通りである. (1)様々な末端構造および一次構造を持つPNIPAの水溶液の曇点近傍における小角X線散乱測定 レドックス系開始剤およびアゾビスイソブチロニトリルを開始剤に用いてラジカル重合したPNIPA試料,ならびにリビングアニオン重合法によって合成した直鎖PNIPA試料の稀薄から濃厚な濃度領域にわたる水溶液について,曇点を挟む温度範囲にわたって小角X線散乱測定を行い,昇温にともなう同水溶液中で形成されるナノスケールあるいはメゾスケールの構造を明らかにするため,SPring8において予備実験を行ったが,高分子間架橋が起こり,望む測定はできなかった.現在,適切な測定条件を検討しており,今後再測定を行う. (2)様々な末端構造および一次構造を持つPNIPAの水溶液の曇点近傍における熱量測定 (1)と同様に種々のPNIPA試料の稀薄から濃厚な濃度領域における水溶液について,曇点を挟む温度範囲にわたる熱量測定を行い,昇温にともなうPNIPAの繰返し単位と水分子との相互作用の状態の変化を明らかにするために,京都大学大学院工学研究科に共通機器として設置されているセイコーインスツル社製熱流束型示差走査熱量計で測定を行った.さらに,熱量測定で検出される吸熱ピークより決定される転移温度と転移エンタルピーに対するPNIPA試料の末端基と一次構造の違いの影響を系統的に調査・検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」に述べたように,小角X線散乱の予備実験において高分子間架橋が起こり,望んだような高分子間会合状態に関する情報を得ることができなかった.X線強度を適切に選ぶことで問題は回避できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
小角X線散乱実験より得られたPNIPA水溶液の曇点近傍における構造の温度変化を明らかにし,すでに熱量測定より得られたPNIPA繰返し単位と水分子との間の相互作用の温度変化に関する情報とあわせて,温度上昇にともなうPNIPA水溶液の白濁現象の分子論的メカニズムを解明する.末端構造および一次構造が異なるPNIPAの水溶液が示す相挙動の多様性を総体的に理解し,高分子水溶液が示す特異的挙動を包括的に理解するための基礎を得る.
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