2011 Fiscal Year Annual Research Report
進化する刺激応答性ポリマー:多様な温度応答性/精密分解型リビングポリマーの新設計
Project/Area Number |
22350051
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青島 貞人 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50183728)
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Keywords | 自然調和型ポリマー / 刺激応答性ポリマー / 精密分解型ポリマー / リビングカチオン重合 / グラフトポリマー / 星型ポリマー / モノマー選択重合 / リビング開始剤系 |
Research Abstract |
生体系にない刺激応答機能を有する低環境負荷(自然調和)型材料の創製のため、当研究室で見出したリビングカチオン重合を新たに設計し直し、以下のような刺激応答性リビングポリマーを精密合成した。 1.種々の構造の刺激応答性ポリマーを合成するための新しい制御重合関始剤系の関発:これまで刺激応答性ポリマーを合成するためビニルエーテル(VE)を用いてきたが、更なる進化のためにスチレン系やアルケン系への拡張を検討した。その結果、アルコキシスチレンの重合では添加塩基存在下でもルイス酸の選択が重要で、VEと異なりFeCl_3,GaCl_3,AlCl_3では重合が制御できなかったが、SnCl_4,ZnCl_2,TiCl_4を用いるとリビング重合が進行するようになった。また、ビニルシクロヘキサンや天然由来のβ-ピネンの系では、微量の芳香族添加が重合制御に重要なことがわかった。 2.側鎖の構造・形態・シークエンスの異なる刺激応答性ポリマーの合成:星型、グラフト型などの刺激応答性ポリマーを選択合成する方法を新たに検討した。スチレン類とVEの共重合において、ある特殊な条件下ではモノマー選択重合が進行することを見出し、これを利用して一段階でブロックや星型ポリマーが選択合成できる"ドミノ合成法"を開発した。また、ポリマーの末端や側鎖のアセタール基からの定量的なリビング重合法を見出し、新しいブロック、グラフトコポリマーの合成も可能にした。 3.低分子化合物に完全分解する交互型リビングポリマーの合成:昨年度、アルデヒドとVEの交互ポリマーが得られることを見出した。本年度は反応機構を詳細に検討するとともに、その知見に基づき自然界に存在する共役アルデヒドを用いた完全分解可能な交互ポリマーの精密合成を行った。ミルテナールとVEから得られたポリマーは分子量分布が狭く副生成物がない交互ポリマーであり、酸加水分解により完全に分解した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
刺激応答機能を有する低環境負荷(自然調和)型材料の創製を行っているが、新しいモノマーや分岐型ポリマーを精密合成するために新規重合系を検討していたところ、当初の予想を上回り、従来無い特徴を有する新規開始剤系が3種類開発された。スチレン系ではビニルエーテル系とは異なるルイス酸触媒が有効であること、ある特殊な条件ではモノマー選択重合が進行すること、単離したポリマーのアセタール末端/側鎖からのリビング重合すること、などが見出された。これらは、いずれも今後の刺激応答機能を有するポリマーの精密重合に極めて有効になる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進方策としては当初と大きな変更はなく、予定どおり、刺激応答機能を有する低環境負荷(自然調和)型材料の創製を継続して検討していく。特に、今年度可能性が明確になった新たな3種の精密合成法(上記)はこのような材料合成に極めて有効と考えられる。たとえば、柔らかい刺激応答性ビニルーエーテルポリマーに、硬いセグメントのスチレン類ポリマーを組み合わせると、さまざまな刺激応答性(スマート)フィルムが創成できるだけでなく、溶液中でも従来はなかった集合体形成やゾルーゲル転移が可能になる。また、グラフトや星型などの新しい分岐ポリマー合成法を刺激応答材料の創成に用いて、これまでのブロック型ポリマーとは異なる様々な挙動・機能の発現を検討していく。
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