2010 Fiscal Year Annual Research Report
光-スピン-電荷の相乗効果による新規連鎖物性を発現させる有機無機複合錯体の開拓
Project/Area Number |
22350057
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 憲道 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60149656)
|
Keywords | 電荷移動相転移 / 混合原子価 / 強磁性 / 光異性化 / 光誘起相転移 / 多重機能性 / スピン平衡 / 原子価揺動 |
Research Abstract |
本研究課題は、様々な金属錯体に光異性化分子など外場応答性分子を組み込んだ有機・無機複合錯体を開発し、光・スピン・電荷の相乗効果による様々な協奏的物性現象の開拓的研究を体系的に行うことを目的にしている。この目的を遂行するため、平成22年度は、非対称配位子mto(=C_2O_3S),dto(=C_2O_2S_2),tto(=C_2OS_3))で架橋したスピンクロスオーバー領域にある強磁性混合原子価錯体A[Fe^<II>Fe^<III>(X)_3](A=対イオン,X=mto,dto,tto)を開発し、その物性研究を行った。特筆すべき成果としては、(1)集積型金属錯体(C_6H_5)_4P【Zn^<II>Fe^<III>(mto)_3】においてFe^<III>O_3S_3サイトにおける速いスピン平衡(動的スピンクロスオーバー現象)が10^<-10><τ<10^<-7>秒の時間尺度で起きていることを見出したこと、(2)(n-C_nH_<2n+1>)_4N[Zn^<II>Fe^<III>(mto)_3](n=2-4)においてカチオンのサイズおよび温度によってスピン平衡の時間尺度が劇的に変化することを見出したこと、(3)(C_6H_5)_4P[Mn^<II>Fe^<III>(mto)_3]においてFe^<III>O_3S_3サイトにおける速いスピン平衡(動的スピンクロスオーバー現象)がFeスピンの磁気秩序化を抑制し、Mn^<II>スピンとFe^<III>スピンが異なる温度で磁気秩序化を起こすことを見出したこと、(4)(n-C_4H_9)_4N[Fe^<II>Fe^<III>(mto)_3】においてFe^<III>O_3S_3サイトの低スピン状態を媒介としたF^<III>O_3S_3サイトの速いスピン平衡とFe^<II>-Fe^<III>間原子価揺動の協奏現象が起きていることを見出したことなど、Fe^<III>サイトのスピン状態がスピンクロスオーバー領域にある集積型混合原子価錯体A[M^<II>Fe^<III>(mto)_3](A=対カチオン;M=Zn,Mn,Fe;mto=C_2O_3S)の動的スピン平衡とそれに連鎖して起こる新規物性現象に関して系統的な研究成果を得ることができた。
|
Research Products
(42 results)