2011 Fiscal Year Annual Research Report
光・スピン・電荷の相乗効果による新規連鎖物性を発現させる有機無機複合錯体の開発
Project/Area Number |
22350057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 憲道 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60149656)
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Keywords | 電荷移動相転移 / 混合原子価 / 強磁性 / 光異性化 / 光誘起相転移 / 多重機能性 / スピン平衡 / 原子価揺動 |
Research Abstract |
本研究課題では、遷移金属錯体を対象に光・スピン・電荷の相乗効果による協奏的物性現象の開拓的研究を体系的に行うことを目的としている。昨年度は、下記に示す研究を推進してきた。(1)配位子場がスピンクロスオーバー領域にある非対称配位子mto(=C_2O_3S)を架橋とする集積型金属錯体A【M^<II>Fe^<III>(mto)_3】(A=(C_nH_<2n+1>) _4N,Ph_4P,M=Mn,Fe,Ni,Zn)を合成し、Fe^<III>サイトの速いスピン平衡およびこれと連鎖して起こる電荷揺動,多段階磁気相転移などの協奏的物性現象を磁気測定、誘電応答、メスバウアー分光法、ミューオンスピン分光法により詳細に調べた。(2)固体中で光異性化を起こす新しいアニオン性スピロピランを合成することに初めて成功し、このスピロピランが溶液中及びKBr希釈した固体中でも光異性化することを実証した。室温固体中で光異性化するアニオン性スピロピランは初めての報告である。この新たに開発したアニオン性スピロピランを対イオンに用いることで、スピンクロスオーバー錯体をはじめ多くのカチオン性遷移金属錯体と光異性化分子を組み合わせた分子設計が可能となった。(3)スピン転移温度がpHに依存する室温スピンクロスオーバー鉄錯体[Fe(II){(NH_2)_2sar}](sar=1,8-diamino-3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6,6,6]icosane)をイオン交換膜Nfionのナノ空間反応場で合成し、この透明スピンクロスオーバー鉄錯体膜に電圧を印加することによりプロトンの濃度勾配を発現させ、低スピン状態と高スピン状態の時空間制御を行い、低スピン状態と高スピン状態の膜の色の変化を利用してプロトンの流れを可視化することに世界で初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)固体中で光異性化を起こすアニオン性スピロピランを初めて合成したこと、(2)pH応答透明室温スピンクロスオーバー錯体膜に電圧を印加することにより、プロトンの濃度勾配を発現させ、スピンクロスオーバー転移の時空間制御によって発現する膜の色変化を利用してプロトンの流れを初めて可視化したことは、当初の計画以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)昨年度は固体中で光異性化を起こす新しいアニオン性スピロピランを合成することに初めて成功したが、今後、この新たに開発したアニオン性スピロピランを対イオンに用いることで、スピンクロスオーバー錯体をはじめとした多くのカチオン性遷移金属錯体と光異性化分子を組み合わせた光応答性多重機能性金属錯体の開発を行う。また、(2)昨年度開発したpH応答透明室温スピンクロスオーバー錯体膜によるプロトン流の可視化の研究を分子システムとして発展させる。
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Research Products
(45 results)