2010 Fiscal Year Annual Research Report
非平面型一重項ビラジカルユニットの集積化による特異な伝導性ナノリボンの創製
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22350058
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 繁和 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00312538)
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Keywords | 一重項ビラジカル / 複素環構造 / 酸化還元特性 / 有機典型元素化学 / 有機エレクトロニクス / 静電相互作用 / 結晶構造解析 / 電荷移動錯体 |
Research Abstract |
リン原子の電子摂動効果とかさ高い置換基の立体効果により高度に安定化された一重項ビラジカルを線形に連結したオリゴ(ビラジカル)の合成について検討した。ビラジカルユニットを連結する部位として、ビフェニル骨格、ジフェニルエーテル構造、そしてm-フェニレン構造が有効であることを見出し、新たな大気中安定な誘導体の合成に成功した。電気化学測定および光吸収スペクトルの測定により、空間を介したビラジカルユニット間相互作用が発現していることを確認した。幾つかの誘導体のデータから、空間を介する相互作用の発現には、ビラジカルユニット間の距離が重要であることが示唆された。このことから、従来の有機電子材料のようなパイ平面の軌道間重なりを必要としない電子移動経路を形成する有機材料開発の可能性が考えられる。 続いて、リン複素環一重項ビラジカルを電子ドナーとする電荷移動錯体の調製について検討を行った。空気中で非常に安定な誘導体を用い、TCNQなどの電子受容体や一電子酸化剤を作用した。現在までのところ、望む電荷移動錯体の生成を示唆する吸収スペクトルの観測を行っており、さらに電荷移動錯体の結晶化およびX線構造解析について検討を行っている。 このようなビラジカルオリゴマーの合成に関連して、ビラジカルの構築法として、一電子移動を利用する新規なプロセスを確立し、すべての置換基がアリール基となった4員環ビラジカル:1,3-ジホスファシクロブタン-2,4-ジイルを合成する有用な方法であることがわかった。また、リン複素環ビラジカルの反応として、水素化アルミニウムリチウムによる特異なアニオン化について特徴ある知見を得ることができた。
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